NISAやiDeCoなどの各種制度が充実し、証券投資がだんだんと身近なものになってきました。しかし、もしも証券会社が倒産したら、運用していた大切な資産はどうなってしまうのでしょうか。最近も米国で銀行が倒産したり、欧州金融大手のクレディ・スイスの経営不安が報じられ、金融機関の健全性に関心が高まっています。30年ほど前には大手の一角だった山一證券が破綻したこともありました。証券会社で投資をすることに不安を感じる方もいるかもしれません。
投資者保護のしくみ
証券会社が破産した場合の投資者保護のしくみとして、分別管理制度と日本投資者保護基金の2つがあります。分別管理は各証券会社が自社で対応するものである一方、日本投資者保護基金はすべての証券会社の共同制度です。それぞれの制度について確認していきましょう。
■分別管理制度
証券会社は顧客から預っている株式や債券などの資産を、証券会社自身が保有する財産とは別に管理することが法律で義務付けられています。これを分別管理制度といい、この制度が機能していた場合は、万が一資産を預けている証券会社が破産したとしても、基本的には顧客の資産には影響しません。
証券会社を介して買い付けた金融資産は、商品ごとに信託銀行や保管振替機関(ほふり)、海外の保管機関など、証券会社とは別の機関に預けられます。そのため証券会社が破産した場合でも、資産はきちんと返還される体制を整えています。
分別管理制度についての詳細は、日本証券業協会が個人投資家向けに作成したリーフレットにわかりやすく書かれています。こちらで確認してみましょう。
■日本投資者保護基金
分別管理で保護されているはずの金融資産ですが、万が一倒産した証券会社がその義務を怠っていた場合は、お客様の資産が円滑に返還されないことが考えられます。
そのような場合には日本投資者保護基金が一人当たり合計1000万円を上限に金銭で補償を行います。
1998年に前身の組織が設立されて以降、南証券※注(2000年)と丸大証券(2012年)の顧客に対する補償を行いました。
この基金には証券会社すべてが加入する必要があり、加入企業から負担金を徴収して投資者保護にあてる資金をプールし、それを補償金に当てています。しかし、返還されない資産が1000万円以上だった場合、1000万円を超えた分は日本投資者保護基金では補償できないことには注意が必要です。
※注 南証券への補償を行った2000年当時は1000万円という上限額はありませんでした。
なお、銀行で買い付けてそのまま保有している投資信託は、日本投資者保護基金の補償対象にはなりません。ただし、銀行として分別管理の義務はあります。
保護対象になるのは?
分別管理制度、日本投資者保護基金、それぞれの制度では、以下のような取引が保護されます。
【分別管理制度】
▽顧客属性:すべての顧客
分別管理制度の対象は証券会社でお取引するすべての顧客の資産です。
この制度はすべての証券会社が法律によって義務付けられているので、それを厳守するために金融庁や証券業協会が定期的に監査を行っています。
▽取引:上場株式・公社債・投資信託などの現物取引や、信用取引の委託保証金、オプション取引などの証拠金など
株式や債券などの一般的な金融商品の現物取引については、分別管理の対象となっています。
一方、信用取引やオプション取引などについては、委託保証金や証拠金など以外は分別管理の対象外になるので、取引の際はきちんと事前に確認してください。
【日本投資者保護基金】
▽顧客属性:金融機関や国など「プロの投資家」を除く「一般投資家」
日本投資者保護基金で保護対象になるのは一般投資家です。個人で運用している人はほとんどが一般投資家なので、その資産はもれなく保護対象になります。
この基金にはすべての証券会社が加入する必要がありますが、取引している証券会社が加入しているかは念のためこちらで確認しておきましょう。
▽取引:上場株式・公社債・投資信託などの現物取引や、信用取引の委託保証金、オプション取引などの証拠金など
株式や債券などの一般的な金融商品の現物取引については、すべて保護の対象です。
一方、信用取引やオプション取引などについては、委託保証金や証拠金など以外は分別管理の対象外になるので、こちらも取引する前にしっかり確認しましょう。
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分別管理制度と日本投資者保護基金の二段階のセーフティネットにより、日本の一般投資家はしっかりと守られています。金融機関を分散させるため、銀行だけでなく、証券会社も大事な資産の預け先として証券投資に取り組んではいかがでしょうか。
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