解決しない…車いす利用者らが「エレベーター乗れない」問題→ひと目でわかる取り組みが話題に 商業施設に聞いた

谷町 邦子 谷町 邦子

車いすやベビーカーの利用者らが、満員でエレベーターになかなか乗れない問題。SNSで当事者が声をあげ、メディアも取り上げる中、JR博多駅の駅ビルによる解決策に注目が集まっています。はたして状況は変わったのでしょうか。

階段などの高低差がある場所では、移動できない車いす。「専用」や「優先」エレベーターにも関わらず譲ってもらえないエピソードを通じて、ユーチューバーの渋谷真子さんをはじめとする複数の車いす利用者が去年から今年にかけてSNSで問題提起し続けています。

投稿には車いすやベビーカーなどの利用経験のある人からの共感や、「気づかなかった、今後意識したい」といった反省、現状への憤りだけでなく、「声をかけてもらわないとわからない」といった戸惑いや反感を示すコメントも。目の前で必要としている人に気づき、自分から譲るという意識はなかなか広く共有されないようです。

そんな中、JR博多駅の商業施設「JR博多シティ」内に、ピンク色にラッピングされて目立つエレベーターがあるとツイッターで話題に。「障害のある人が使える設備」「妊産婦優先設備」「高齢者優先設備」「ベビーカー」「障害のある人・けが人優先設備」「ヘルプマーク(内部障害や難病、初期の妊婦など外見からはわからないけれど助けが必要なことを伝える)」のピクトグラムと「専用」の文字が大きく表示されています。

JR博多シティの担当者に設置理由や、利用客からの反響をたずねました。

「全てのお客さまがご利用しやすいエレベーター」をめざし試行錯誤

階段やエスカレーターで移動できない人々による「エレベーターになかなか乗れない」という意見は、開業した2011年3月から寄せられ、試行錯誤し続けていたという同施設。今年の3月17日に目立つように設置したのが1基の「専用エレベーター」(2023年4月時点)です。

もともとは、2016年8月から博多バスターミナル方面にある「ハンズ側エレベーター」のうち1基を「専用エレベーター」としていました。しかし、専用の対象となる人からは「対象でない人が乗っているので困る」「見た目ではわからないが、自分は対象者だ(障碍者手帳を見せないと乗れないのか?)」などという意見、「専用」の対象とならない人からは「専用エレベーターは必要ない(混雑が解消されない)」「対象者がいない場合は、利用しても良いではないか」「車イス、ベビーカーの同伴者に制限をかけるべきだ」などの意見が寄せられていたのです。

そこで問題を少しでも解決できるように、今回、場所も中央エレベーターへと変えてイメージも一新。設置から約1カ月近く経ち、新しい「専用エレベーター」の反響については、「今のところ、皆さまスムーズにご利用になられていると認識しています。設置以降は、エレベーターに関するご意見・ご要望はいただいておりません」とのことで、不便を訴える声はまだ届いてないとのことです。

現在の「専用エレベーター」の場所やあり方はこれで決定というわけではなく、JR博多シティは今後も「全てのお客さまが、ご利用しやすいエレベーター」となるよう検討を続けていくとしています。

その上で、「車イス、ベビーカーご利用のお客さまは、エレベーター以外に上下階への移動手段がなく、特に途中階からご利用になる場合は、なかなか乗れないことが多いため、お譲りいただくとともに、可能な方は、エスカレーターのご利用もお願いいたします」と呼びかけています。

フロアのほぼ真ん中に位置し、明るいピンクのラッピング、大きな「専用」表示とピクトグラムと目立つ姿になった「専用エレベーター」。利用者の声を受け、ビルを運営するJR博多シティ側が用意したものですが、スムーズな利用を続けるには、多くの人が積極的にエレベーターを譲ったり、なるべくエスカレーターなどを利用したりという協力も必要なのではないでしょうか。

ちなみに、車いすを利用している人がエレベーターに乗れなくて困ったという投稿がツイッターで話題になっていたことについては、「渋谷(真子)様のSNSは、拝読させていただきました」とのこと。ツイッターでの発信はチェックされているようです。

■JR博多駅シティ 公式ホームページ https://www.jrhakatacity.com/

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