子どもの「イヤ」受け入れられない親たち→子どもが「YESマン」に!? 「NO」を言えずに性被害やハラスメントの被害者になる可能性も

宮前 晶子 宮前 晶子

「子どもが何歳であっても。むしろ幼児期から「NO」を言う力を育むことが必要。まずは家庭から【NOを受け入れる】練習を」


漫画家・イラストレーターのフクチマミさん(@fukuchi_mami)が、「たまたま、子どもが泣きながら“嫌!”と言っているのに、親がそれを無視して笑っている動画を目にして。“NO”を示すことの意味、それを受け止める大切さが知られて欲しいなと思い投稿しました」と、NOを伝える大事さを訴えた漫画が話題に。

「私自身が子どもの頃もこういうやりとりは周りでよくあって、悲しい記憶として残っています。こういうことは繰り返されているんだとも思いました」と語るフクチさんにお話を聞きました。

この漫画の「子どもが何歳でも、NOという力を育むことが必要。ひとりひとりが尊重しあって生きることにつながる」という考えに対して、
「NOを言えば怒られる環境で育って今でもNOが言いづらい。娘のNOには共感してあげたい」
「拒絶反応は本当に大事です。数少ない自衛手段です」
「幼稚園の頃から「貸して→いいよ」「ごめん→いいよ」の日本の教育とは真逆ですね」
「我慢や忍耐を美徳としている日本人は、物事をはっきり言うことができないことが多い。だから、陰湿ないじめが存在するし、理不尽な扱いを受けても平気になってしまう。相手は変わらないのだから、自分から変わって発信するしかない」
「うっかり「YES」や強要「YES」をしない/させないように教えています」
など賛同するリプライばかり。
また、「親子でNOを学べる場所があればいいな」という声もありました。

果たして、【NOを受け入れる】練習とは?フクチさんに詳しい話を伺いました。

自分の意思を抑えることはトラブルのもとになる

フクチさんが描いた漫画では、子どもの部屋を勝手に掃除した親が、「もー!!勝手に…こういうのマジでやめてくれない?」と息子から言われ、「いつも体操服がない〜とかプリントが消えた!!とか大さわぎしてるのよ? だから片付けてあげたのに」と、不機嫌になる姿が描かれています。が、実は「子どもが親にNOを示すことは悪いことではない」と話は続きます。

その理由について「自分がされた嫌なこと、不快なことにNOと言えるようになっていると、いざという時NOという意思表示ができる」「日本の社会では、NOを言うとわがまま、自分勝手と言われるがそんなことはない」「NOを言えずに抱え込んでいると、嫌なこと・危険を察知するセンサーが鈍る可能性も」と順序立てて解説。

また同時に「NOを言うことに加え、NOを受け入れる練習も必要」で、ただし、「なんでも子どもの言うことを聞くということではなく、「安全や社会のルールを損なうこととは別。親の意見は保ちつつNOの責任を自分が持つことを伝える」「家庭がNOを言う練習場所になればいい」と結んでいます。

親や周囲の大人がNOを受け入れる練習をするにあたっては、「幼児期のNOの全てを受け入れていては生活が回らないので、完璧には無理ですし、安全や健康、社会のルールを損なうNOは受け入れられませんが、“NOを示すこと、受け入れることの意味”はいつも頭に置いておいて欲しい。それだけで、親や大人自身の言動が変わってきますし、それによって子どもは“自分の意見には意味がある、社会を変える力があるかもしれない”と自分自身に価値があると感じる力が育まれることが重要だと思うのです」。

また、子ども時代を過ぎたから手遅れというものでもなく、「大人であっても、気づいた時からNOを大切にすることを始めればいいと思います」と語ってくれました。

面倒だからYESと言っておこう…

幼い頃から「はい」と答えることを良しとするしつけ・教育を受けてきた私たち。大人になり子どもを育てる立場になると、子どもに「はい」を求めているのではないでしょうか? フクチさん自身も長い間、「NO」を言うのは悪いことだと思っていたそう。

「家庭も学校も社会も大人の言うことを“はい”と聞き分けの良い子を良しとしがちで、NOを示した時だけ“なんで?”と理由を聞かれたり不利益を被ったりする。そういう経験を繰り返すと、“面倒だからYESと言っておこう…”となって、自己決定の力を奪われていってしまうのですよね。私自身も、ひとまず“はい”と従っておいて、陰で愚痴を言うのが周囲を含めて〝普通のふるまい〟だと思って育ちました。でもそれで幸せな気分になったことはないし、むしろ自分の意思が抑え込まれることはトラブルの元になっている気がしてモヤモヤしていました」。

性教育を学ぶ中で出会った“NOを伝えることは自分を守り尊重すること”という考えは目から鱗だったそう。

NOときっぱり言い慣れておくことは、自分の意思を相手に伝えることや自分を表現することだけでなく、嫌なことを強要されそうになった時、理不尽な我慢を強いられた時、性被害に遭いそうになった時、などさまざまな局面で自分を守ることにもつながります。ただ、その力はNOを受け入れられる環境でないと育まれません。 

◇ ◇

フクチさんは、村瀬幸浩さんと共著『おうち性教育はじめます』『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』を上梓。第2弾では思春期の性教育の難しさを踏まえた上で、性のことを伝える方法を提案しています。

「多くの人にはまだ「性教育は生殖に関わることの話(月経・精通・性交・妊娠・避妊など)」だと思われているのですが、それだけではなく、たくさんのテーマがあるとても面白く深い学問。自然科学や歴史、文化など多岐にわたる観点からの総合的な学習なんです。そして大人も子どもも、よりよく生きていくためのこれからの時代に必須の学び。ひとりひとりを尊重し、自分と他者を大切に思うことにも通じています。抵抗感を一歩乗り越えて是非知ってほしいです」

■フクチマミさんTwitter @fukuchi_mami
書籍『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA) 
■書籍『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』(KADOKAWA) 

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