経済的・家庭的な事情などで生理用品を入手することが難しい「生理の貧困」。飲食店を営みながら、生理用品の無償提供に取り組む女性の言葉がTwitterで影響を与え、活動が広がっています。
∞ウツ坊∞ちこのぴのこち∞(@pinobotty3)さん(以下、ウツボさん)は、店内に「無料配布スポット」を設置し、寄付された生理用品を無償で提供。活動についてツイッターで時折報告していくなかで、生理の貧困に気づいて感謝する人もいれば、「スマホは持っているのに…(生理用品買えないなんて)」と活動に対して非難する言葉を投げかける人もいたそうです。
ただ共感する女性は多く、自身や誰かの「生理の貧困」についての記憶がいくつも寄せられました。
「私の高校生時代の話となりますが、お小遣いを一度も貰ったことがなかった為、お年玉や、時給700円で稼いだバイト代でナプキン、文房具を購入していました。経済的に悪化していたのを察知していた為、通学の為の定期代も払って、勿論ケータイ代も…。ナプキンは安い物をギリギリまで使用してました…」
「小学生の頃『夜用ナプキンくれへん?』って言うてくる子がおっての。漏れて下着を汚して怒られるらしい。『母ちゃん買ってくれんの?』と聞いたら『うーん…』って俯くから『ええよ』言うて毎回あげとったんよ。今思えば家庭で色々あったんかもしれん。気付いてやれんかった」
など、生理用品について困っていても、だれかに伝えられずにいる状況があることがわかります。
また実際に教育関係者から寄付とともに手紙が届き、「生理用品が手に入らない子達がいる現実を考えたことがなかった」そうですが、「今できることを」と寄付をするなど行動にうつした経緯がつづられていたそう。2年間伝え続けて、活動に共感する声や、生理用品を必要としている人からの声が届くようになったと言います。
ウツボさんが現在参加するのは、「だれでも」必要な時に「無料で」生理用品にアクセスできることを目指す「一般社団法人JOY」の「生理用品無料配布プロジェクト」。お店を切り盛りしながら生理用品の寄付の1つの拠点として支援し続けています。活動についてお話を聞きました。
生理用品の無料配布は夫がきっかけ
――プロジェクトに参加したきっかけは?
「2021年の5月に夫が、父娘2人暮らしの娘さんが、お父さんに遠慮をして、生理用品を買う事をなかなか言えないという内容の番組を観たことでした。その翌日、わたしに、お店のトイレに、自由に持って行ける様に生理用品を用意しておこうか、と話してきて。その事をツイートしたのがきっかけで、生理用品無料配布プロジェクトの佐々木さん(一般社団法人JOY 代表理事・佐々木絵美さん)からDMをいただき、生理用品がダンボール一杯に送られてきたんです。それを袋に詰めて配布するようになったのが始まりです」
――ウツボさんの取り組みを具体的に教えてもらえますか。
「寄付で届いた生理用品を、袋に7個くらい詰めて、お店にいらしたお客様にお渡ししてます。また、募金箱も設置して、そこから生理用品の購入や、プロジェクトへの寄付に充てています。最初の1、2回はプロジェクトから寄付された生理用品を渡していましたが、私のツイッターのフォロワーさんで、個人的にうちの店に生理用品を寄付してくださる方が沢山いらして、今は、在庫が少なくなったら声をかけて寄付を募るという形に。プロジェクトには他の必要なところに配布してもらうようにしています」
――飲食業をしながらのプロジェクトの参加は、大変では?
「特に大きな苦労などはないです。私たちは元々ある場所で活動ができてますので、仕事の合間に生理用品を詰める作業が加わっただけです」
――プロジェクトへの反響どのように受けとめていますか。肯定的なもの、否定的なもの、それぞれについての考えを聞かせてください。
「まず、圧倒的に肯定的な反応がほとんどです。なんでこんなにみなさん好意的に受け入れてくれるのかなと…私なりに考えたのですが、もしかしたら男性である夫からの発案、というのが大きいんじゃないかなと。その事により、女性に対して批判的な人も否定的なことを言いにくくなったり、こういう支援の仕方もあるのかと知ってもらいやすくなっていると感じています。
否定的な反応としては、『スマホは買えるのに生理用品は買えないのか』と言うような、『いつの時代を生きてらっしゃるの?』と思える言葉もいくつかありました。今の時代、スマホは生活必需品です。それと生理用品を比べる事自体ナンセンスでは?という印象です」
――「生理用品無料配布プロジェクト」について、改めて伝えたいことは。
「もうすぐ活動を始めて2年が経ちますが、ここまで活動を継続できたのは、ひとえに、寄付をしてくださる皆さんのおかげです。私たちだけでは、まず無理だったので。本当にありがたいです。願わくば、トイレットペーパーと同じように、公共施設や学校に、当たり前に生理用品が使える場所が増えればいいなと思います。貧困だけではなく、様々な理由で生理用品を手にできない人たちがいて、それは、決して他人事ではないなと思います。いつ自分や家族がその立場になるかもわからない。そういう想像をしてみるだけでも、違う視点が生まれるのではないかなぁ、なんて思います」
◇ ◇
ウツボさんが活動について投稿することで、「私もいつか余裕ある時に多めに買ってそういう所にあげたいです」「いつも思うの。支援したい場合はどこにどう、支援すればいい? ウツボさんのお店に送れば受け取ってもらえる?」と、支援したいという意思を表明する人もいました。「生理の貧困」という言葉が多くの人に共有されたのはここ数年ですが、問題そのものは身近で「自分も力になりたい」という人も多くいることがうかがえました。
ウツボさんが参加する「生理用品無料配布プロジェクト」では、寄付で集まった生理用品を北海道函館市を中心とした、学校や公共機関などのトイレに設置。必要とする人が気軽に使用できるよう、定期的に補充しています。また、外国人技能実習生や留学生にも定期的な支援や、生理用品の正しい使い方や生理に関する啓発活動、講演を実施。運営資金や郵送での生理用品寄付(開封後1年未満なら開封したものも可・着払い不可)などの支援、「無料スポット」として必要な人に生理用品を提供する施設や店舗を募っています。「生理用品無料配布プロジェクト」に興味を持った方はウツボさんのアカウントまでご連絡ください。
■∞ウツ坊∞ちこのぴのこち∞(@pinobotty3)さんのTwitter https://twitter.com/pinobotty3
■一般社団法人JOY https://joy.or.jp/