広域強盗事件の指示役4人に逮捕状…フィリピン収容所の実態 送還避ける出来レース 別の“黒幕”も?

小川 泰平 小川 泰平

 全国各地で相次いだ広域強盗事件で、警察当局がフィリピンの首都マニラにある入管施設に拘束されている「指示役」とみられる日本人の男4人の日本への移送を現地当局に求め、名前と顔写真も公表された。国際犯罪に詳しい元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が30日、当サイトの取材に対し、スマートフォンを使った犯罪行為も可能である収容所の実態や生活について説明。今回、逮捕状が出た4人以外にもさらなる“黒幕”がいる可能性を指摘した。

 警視庁が特殊詐欺事件で逮捕状を取得したのは渡辺優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の4容疑者。フィリピンからSNSを通じて実行役に指示していた指示役「ルフィ」が含まれるとみられ、強盗事件との関連を調べる。

 小川氏は「今村容疑者と渡辺容疑者は同じ北海道出身で反社的な組織とつながりがある。今村容疑者はフィリピンに渡った当時は山口組系の2次団体に所属する組員で、犯行時は“元組員”になっている可能性はある。渡辺容疑者は正式な組員ではない“周辺者”ということを聞いています」と説明した。

 渡辺容疑者はフィリピンで女性や子どもへの暴力行為の容疑で裁判の手続き中で、出国停止命令が出ている。現地で起こした事件で係争中であれば、母国に強制送還されないため、金銭などを介して現地の協力者に告訴してもらい、事件をでっち上げて収容所に長くいるケースがあるという。

 小川氏は「今回だけでなく、以前からあった『特殊な逃げ道』です。重い罪が待っている母国に強制送還されないためだけにやっている『出来レース』ですから、告訴の途中で取り下げたり、また別件で告訴したり。外にいるより中にいる方が安全という考えで、裏金を渡して何年もいる者がいます。そうして時間と金を稼ぎ、最終的には他人名義のパスポートを得て第三国に出て行くというのが最終目的です」と解説した。

 さらに、小川氏は収容所の実態を説明した。

 「私が以前にインタビューした者の話ですと、施設ではなく、(看守ら)個人に金を払って、たばこやファストフード店の食べ物などを買ってきてもらう。VIPルームを担当する看守に話して、エアコンのある個室に入りたいなどというと金額が変わってくるということが普通に行われている。金の入手ですが、日本円で1千万円くらいも持っていると、収容所内でいろんなものが(インフレ状態になって)高くなるので、フィリピンにいる交際相手や知人らに少しずつ(日本などから送られてきた)お金を持ってきてもらう」

 一方で、フィリピン・マルコス大統領の2月訪日を背景にした対日本への配慮として、同国の外相が4人の容疑者を早期に引き渡す意向を明言した。

 小川氏は「私が国際捜査課にいる時も、私の上司がフィリピンの日本大使館にいましたが、現在もフィリピンの日本大使館には警部の階級にある者が警察庁から外務省に身分替えして常駐し、フィリピンの当局と引き渡しに関して調整し、警察庁や警視庁と連絡を取り合っていると聞いています」と明かした。

 その上で、小川氏は指示役とみられる4人以外にも、さらなる“黒幕”がいると推測した。

 「収容所の中から指示は出せても、その場所に日本国内の情報が簡単に集まるかどうかには限界がある。やはり、『収容所内の指示役に情報を渡せ』と実行役に指示する別の者がいなければ、今回の一連の犯罪を行うのは難しい。事件に直接関与しているかどうかは別として、『収容所内の指示役への指示を実行役に指示する別の人間』がいると思います。また、国外から指示を出していることを分かりにくくするために、日本国内にも『ルフィ』という名前を使っている者がいます」

 今後の全容解明に向けて、小川氏は「指示役の容疑者は逮捕されても完全黙秘を貫くでしょう。後は犯行に使った通信機器ですね。どれだけ連絡を取り合っていたかが究明されていくかも焦点になります」と見解を語った。

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