宮台真司さん襲撃犯はどこへ?近場で潜伏の可能性も 公開映像の「目」に注目 捜査は難航、元刑事が指摘

小川 泰平 小川 泰平

 東京都八王子市の東京都立大南大沢キャンパスで11月29日、都立大教授で社会学者の宮台真司さん(63)が何者かに背後から首付近などを複数回切りつけられて重傷を負った殺人未遂事件で、警視庁は今月12日に逃走中の男とみられる動画と画像を公開したが、14日時点でまだ身柄の確保には至っていない。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は15日、当サイトの取材に対し、実際に現場を歩いて確認した犯人の逃走経路や、難航する捜査状況について解説した。

 事件は11月29日午後4時過ぎ、都立大南大沢キャンパスの学生会館北側の路上で発生。講義を終え、単身で駐車場に向かっていた宮台さんは後方から突然、殴られ、さらに鋭利な刃物で何度も切り付けられ、顔や右足などに1カ月の重傷を負った。男は襲撃後、現場から約100メートル離れた中門の脇の植え込みを抜け、敷地の北側の住宅街に逃走。八王子市上柚木2丁目のコンビニ前を通過し、徒歩で都道20号方面に向かったのを最後に行方が分からなくなった。

 捜査1課によると、公開された防犯カメラの映像などから身長は180-190センチとみられ、オレンジ色のニット帽に黒っぽいジャンパーとズボン姿。グレーのリュックサックを背負い、白いマスクを着用していた。宮台さんは「無言で切りつけられた。(男について)面識はない」と説明している。

 小川は氏「大学の中門を出てすぐ、50メートルも行かないくらいから住宅街があり、その住宅街にあるいくつかの防犯カメラに犯人が映っているという話は当初からありました。警視庁ではSSBC(捜査支援分析センター)という防犯カメラの映像を解析するエキスパートが捜査をしているので、当初、犯人逮捕は早いのではないかと思っていたのですが、今のところ、逮捕に至っていないということは、防犯カメラに映っている所より先では防犯カメラで犯人がとらえられていない、途中から追えていない、ということなのかと思います」と捜査が難航している背景を推測した。

 捜査内容について、小川氏は「例えば、リュックに特徴があるため、それと同じ物を売っている店を大学周辺から始まって都内全域へとたどり、店舗には防犯カメラもありますし、店員の記憶も聞いているでしょう。そうした確認作業は当然進んでいる。年齢については若く見えますが、あまり年齢を絞ると、学生じゃないかという話も出て来るので、あえて20-30代くらいとしたのではないかと思います」とした。

 実際に現場を歩いた。小川氏は「住宅街を歩いていると、すぐ目に付く場所に防犯カメラがあるが、犯人はそこを堂々と歩いているので、防犯カメラを避けているわけではない。犯人が住宅街を歩いている動画を見ると、明らかにこの場所を歩き慣れている。犯行後、慌てて逃げている歩き方ではない。私も実際に同じ方向に歩いて行ったのですが、団地を抜けられる道があり、それを明らかに知って堂々と歩いているところを見ると、周辺の土地鑑(とちかん)があって、なおかつ、自分がどういうふうに逃走するかを考えて歩いていると感じた」と説明した。

 さらに、同氏は「住宅街をいったん抜けて、遊歩道の先の先にあるバス通り沿いのコンビニエンスストア前の防犯カメラにも映っている。その先の路地を右折する所はドライブレコーダーに映っていることが分かっている。バス通りにいったん出るも、すぐに右折し、住宅街の中に入っており、あまり遠くまで行かず、その周辺にとどまっている可能性もある。徒歩で逃走しているが、途中で車、バイク、自転車等に乗り換えて逃走している可能性も考えられる」と見解を示した。

 宮台さんには武道の心得があり、犯人の刃物による攻撃に対抗したと報じられている。小川氏は「武道等を心得ている人でも、後方からいきなり殴られたとなると、避けられない。その後で正面から何度も刃物で切りつけられているんですが、宮台教授は両腕に防御創があるようにその攻撃を防いでいた。そこが一命を取り留めた大きな要因ではなかったのではないか。宮台教授でなければ、殺害されていた可能性が非常に高いと思います」と指摘した。

 また、小川氏は「この容疑者は宮台教授を特定して狙った犯行で、無差別的な犯行ではないとみられているが、それでも、逃走中の男は凶器を持った状態で未検挙であるということは、一般の住民にとっても不安がある」と付け加えた。

 今後の捜査のポイントについて、小川氏は「映像の確認をもっと幅広くすることや、宮台教授が過去にいろんなことがあった中で心当たりがあったかどうかを確認することも含め、捜査は続けられる。今回、公開された正面からの映像は犯人の目がある程度映っているので、家族や友人、知人等、この人物を知る人ならある程度、マスクをしていても誰か分かると思います。1日でも早い犯人の検挙のためにも、ぜひ協力していただきたい」と呼びかけた。

 情報提供は警視庁南大沢署、電話042(653)0110。

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