寒い夜には、屋外の水道をチョロチョロ出しておく―。水道管の凍結を防ぐために昔から言われてきた生活の知恵ですが、まさかそのまま凍ってしまうなんて!? さらに凍ったシンクの中にはひとひらの紅葉が。大寒波がつくった一瞬の「芸術品」が話題になりました。
半世紀を超える旅館の歴史で初めて
「今シーズン最強」といわれたクリスマス寒波が襲来した12月24日朝、衝撃の光景に思わず「なんと立派な」とツイートしたのは、隠れた名湯として有名な神奈川県厚木市の七沢温泉にある「七沢荘」の公式アカウント。「氷柱化してる」「芸術ですな」「壊したくない…」と話題を集めました。
七沢荘3代目見習いというつぶやき主さんに聞きました。
―こんなことになるんですね??
「僕もびっくりしました。30年生きてきて初めてですし、うちの親も見たことがないというので…50年ぐらいで初かもしれません。この辺りは寒くてもせいぜいバケツの水が薄く凍る程度で、雪が降っても積もりはしないですし」
―屋外の水道ですよね?
「旅館の裏手にある、ぞうきんなどを洗うためのシンクです。これまでも冷え込む夜には凍結防止にチョロチョロ出すことはあって、今回も『最強寒波が来る』というので、前日夜から少しずつ流していました」
―見事に、流れたままです。
「太さが1~2㎝ほど、高さは30㎝ほどだったと思います。以前、水がポタポタ落ちたのが凍って山のようになっていた時があったので、きっと下から下から凍って行ったのかな、と」
―紅葉がいいアクセントです。
「全くの偶然だったんですけど、『きれいですね』『風情がある』とリプライを頂いて。Twitterはコロナ禍ですることがなくなって始めて、これだけバズったのは客室の窓と網戸の間に鳥が巣を作った―というツイート以来。本業の話題では全くなのが悲しいですが。氷は『水道をなんとかしないと!』とすぐにたたき割ってしまったので、もう少し飾ったりすれば良かったです(苦笑)」
と、ちょっぴり残念そうでした。ちなみに、厚木市に近い海老名市の最低気温は、クリスマス寒波が襲った23日午後10時すぎには氷点下に。24日午前3時20分には最低の-4℃を記録し、4時すぎまで氷点下が続きました。もちろん、今シーズン最低です。
-4℃以下になると凍結・破裂の恐れ
神奈川県のホームページによると、気温が-4℃以下になると水道管の凍結や破裂の恐れがあり、もし凍ってしまった場合は、凍った部分にタオルや布などをかぶせ、その上からゆっくりと「ぬるま湯」をかけるのが良いとか。蛇口から水が出ない場合でも、蛇口は必ず閉めて自然にとけるのを待つのが大切で、熱湯を急にかけると水道管や蛇口が破裂することがあるそうです。
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こんな奇跡が生まれた七沢温泉、pH9.54という強アルカリ性でとろりとした泉質が自慢の「美肌の湯」。都内からも日帰りで訪れることができる隠れた名湯でリピーターも多いそう。七沢荘は建て替えを予定しており、営業は1月末まで。4月に新装オープンを予定しているそうです。予報では寒い冬になりそうな今冬。しっかり防寒や備えをしつつ、温かい温泉でほっこり、したいですね。