関東ではJR中央線沿いに大学が多い印象がありますが、関西では関西大手私鉄の沿線に有名大学が数多く存在します。最近でこそ関西でも立命館大学大阪いばらきキャンパスのようにJR線沿いにキャンパスが開設されていますが、昔からある大学の本キャンパスは私鉄沿線にあることが多いです。
沿線に大学が多い阪急
まずは阪急から。たとえば千里線の「関大前駅」は関西大学千里山キャンパスの最寄り駅です。関大前駅は「大学前駅」と「花壇前駅」が統合したかたちで生まれた駅ですが、「花壇前駅」は6回も駅名変更をしました。
阪急には、大学の略称が駅名になった例がほかにもあります。阪急宝塚本線には箕面線が分岐する主要駅「石橋阪大前駅」があり、大阪大学豊中キャンパスの最寄り駅となります。現在の駅名になったのは意外と新しく、2019年のこと。それまでは、シンプルな駅名「石橋駅」でした。
関大前駅、石橋阪大前駅以外にも大学の最寄り駅はあります。美しいヴォ―リズ建築を持つ関西学院大学西宮上ケ原キャンパスの最寄り駅は今津北線甲東園駅・仁川駅です。
また六甲山の玄関口にあたる神戸本線六甲駅は、神戸大学六甲台キャンパスの最寄り駅でもあります。
阪神・京阪・近鉄と大学の関係は?
阪急と並走する阪神沿線には大学が少ないですが、阪神は武庫川女子大学・武庫川女子短期大学部と包括連携協定を結んでいます。
全国的には「大学」が付く駅と大学キャンパスまでは離れているケースが多いですが、京阪「龍谷大前深草駅」から龍谷大学深草キャンパスは、徒歩3分ほどの距離です。これだけ近距離にもかかわらず、駅名は長年「深草駅」でした。
マグロの養殖で有名な近畿大学の東大阪キャンパスの最寄り駅は、近鉄大阪線の長瀬駅。長瀬駅の駅名板には副駅名の「近畿大学前」が併記されています。
ふだん、長瀬駅は普通列車しか停車しませんが、入試シーズンになると一部の優等列車が臨時停車します。いっぽう大阪線には、大学名を冠した大阪教育大前駅が存在します。
南海は新駅を設置
南海と大学との関係で絶対に外せないのが、南海本線の和歌山大学前駅(副駅名:ふじと台)です。これまで見てきたとおり、大学名が付く駅は駅名変更が多いのですが、同駅は2012年に開業した新設駅です。
新駅の開業により、駅からキャンパスまでのアクセスが大幅に改善。また特急も停まり、難波駅から同駅までは1時間以内でアクセスできます。
このように、駅名変更や包括連携協定など、関西大手私鉄と大学との関係は大きく変わろうとしています。ひょっとすると、関西から鉄道と大学とのコラボレーションにより、世間を「あっ」と驚かすアイディアが生まれるかもしれません。
◆新田浩之(にった・ひろし) 1987年兵庫県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道や中欧・東欧の鉄道旅行をテーマとした執筆活動を行なう。最新刊として2022年12月に「関西の私鉄格差」を刊行。私鉄王国・関西を走る近鉄・阪急・南海・京阪・阪神の大手5社について、車両、ダイヤ、運行、路線、駅、サービス…などのキーワードから、それぞれの魅力を読み解いている。
KAWADE夢文庫。224ページ、792円(税込)。