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2歳で、脊髄性筋萎縮症を発症した20代女性……ほぼベッドで生活 “働きたい”という願いを東京で実現「人の役に立つことができ、世界が広がった」

山陽新聞社 山陽新聞社

筋力が徐々に衰える難病・脊髄性筋萎縮症と闘う干場文華さん(23)=岡山県吉備中央町西=が、自宅からの遠隔操作で接客や配膳をこなす「分身ロボット」を活用して東京のカフェで働いている。

テクノロジーの力で障害を克服し「働くことで人の役に立つことができ、世界が広がった」と笑顔を見せる。将来、自立して東京で暮らすという夢の実現に向け奮闘中だ。

「いらっしゃいませ。岡山から操作しています。どちらから来られましたか」

高さ約20センチの人形のようなロボットに備えたマイクとスピーカーを通じて「生」の声で会話しながら客を席に誘導したり、注文を受けたり。干場さんは自宅のパソコンを手慣れた様子で操作、カフェのロボットを動かして一連の業務に当たっている。

干場さんは2歳で脊髄性筋萎縮症を発症。幼少期から車いすで過ごす日々が続き、中学生になって以降は体力が低下し、一日の大半をベッドで過ごすようになった。

カフェで仕事を始めたのは2021年8月、主治医との雑談がきっかけだった。

話の中で東京都中央区の「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」が、遠隔操作で分身ロボットを動かして接客をする働き手「パイロット」を募集していることを知った。県立倉敷まきび支援学校卒業後の進路に悩んでいた時期で、「やってみたかった接客業務ができる」と即座に応募した。面接を経て採用され、研修を受けた後、22年1月から勤務。現在は1日4時間程度の業務を週3回こなしている。

パイロットの業務は多岐にわたる。入店客を席へ案内し、各テーブルに据え付けた小型ロボットで客と会話し注文やアレルギーの有無を確認、移動できる別のロボットで注文の品を配膳する。パイロットは全国に約100人いて交代で接客に当たる。

カフェではインバウンド(訪日客)の来店も多く、干場さんは英語による接客もこなす。趣味の映画鑑賞などを通じて英会話を習得した。ある米国人カップルは干場さんの接客を気に入り、1年後に再来店。「『いい時間を過ごせた』との言葉をもらい勇気付けられた」と振り返る。

うれしいのは「働くことで自分の世界が広がる感覚があること」という。同僚パイロットとオンライン会議システムを使って世間話を楽しみ、時には励まし合う。昨年開催された大阪・関西万博のイベントにも〝出張〟し、働き方の多様性を示した。今後の目標は同じ病を抱えながら東京で生活する兄慎也さん(29)と同様に、経済的に自立し上京することだ。

カフェで働き始めて5年目を迎えた。干場さんのパイロットネームは「MOON」。人を照らす存在になりたいと付けた。「障害や病気があっても科学技術の力で補える。可能性を信じて広い世界に飛び出していきたい」

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