関西ではみんな定期券を使わないの? 極端に低い大阪メトロの定期券利用率…その理由を調べてみた

どなどな探検隊

新田 浩之 新田 浩之

「関西の人たちは定期券を使わないという噂があるが本当なのか」という疑問が当サイトに寄せられました。コロナ禍でテレワークが推進され、毎日通勤する人が減っている昨今ですが、それ以前から定期を使う人がほかの地域と比べると少ないのではないかといいます。実際のところはどうなのか、調査することにしました。

定期券利用率が極端に低いのは大阪メトロ

まずは関東と関西の定期券利用率を比較してみましょう。国土交通省が発表している2018(平成30)年度運輸成績表(延日キロ,人(トン)キロ,平均数)から算出すると、関東(関東運輸局全体)では定期券利用の割合は全体の約63%。対して関西(近畿運輸局)では約53%と、関東よりも10%近く定期券利用率が低いことがわかります。

次に同時期における路線別の運輸成績表(収入)から、定期券の占める割合を確認します。すると東京メトロの定期券構成比が32%~49%だったのに対し、大阪市営地下鉄(現大阪メトロ)は20%~25%と相当の開きがあることがわかりました。参考までに関東大手私鉄の定期券構成比は43%、関西大手私鉄は34%でした。

このように大阪メトロでの定期券利用率の低さは際立っています。それではなぜ大阪メトロの利用者は定期券を使いたがらないのでしょうか。 

背景にあるのは大阪メトロの独自サービス

大阪メトロ利用者の定期券利用率の低さの要因として考えられるのは同社の独自サービス「マイスタイル」です。「マイスタイル」は交通系ICカード「PiTaPa」を利用した利用額割引サービスです。

「マイスタイル」は定期券と同じく事前に乗降する2駅を登録しますが、いくつか違いがあります。1つ目は利用できるエリアが広いことです。たとえばなんば~堺筋本町(1区)で定期券とマイスタイルを比較してみましょう。定期券では経路上の駅が乗降可能のため、乗降可能駅はなんば、四ツ橋、心斎橋、本町、堺筋本町となります。

「マイスタイル」は事前に指定した2つの「登録駅」で構成されるエリア内で使えます。「登録駅」がなんば~堺筋本町 1区であれば、なんばの180円エリア(1区)と堺筋本町の180円エリア(1区)の重複エリア内にある駅が乗降可能な「対象駅」となります。「登録駅」⇔「登録駅」、「登録駅」⇔「対象駅」であれば追加料金なしで利用できます。

2つ目は「登録駅」⇔「登録駅」、「登録駅」⇔「対象駅」であれば使った分だけ支払えばOKな点です。定期券の場合は定額・前払いが基本です。「マイスタイル」では使った分だけ後で支払えばいいので、ゴールデンウイークなどの利用が少ない月であれば、支払額は安くなります。

月ごとに上限額が定められていますが、上限を超えた分は支払わなくてOK。上限額は「登録駅」間の6カ月定期券6分の1相当の金額に設定されています。なお「登録駅」⇔「登録駅」、「登録駅」⇔「対象駅」以外の利用は別途料金が発生します。

利用額に応じて運賃の割引があるのもマイスタイルの特長のひとつ。そのため定期券、回数カード、一日乗車券のようにシーンごとに使い分ける必要はありません。

大阪メトロのYouTubeチャンネルに「定期券の代わりにおすすめ!マイスタイルって?」という動画があるように、強力にマイスタイルをはじめとする交通系ICカードの利用をすすめています。こういう宣伝効果もあり、大阪メトロの定期券利用率は低いのでしょう。

実際に大阪メトロに問い合わせたところ、定期券利用率の低さに関して「マイスタイルが影響していると思う」と述べました。 

大阪メトロ以外の路線で「マイスタイル」はできるか?

結局のところ、「マイスタイル」のサービスを享受するには大阪メトロのような複雑な路線網が必要です。神戸市営地下鉄と京都市営地下鉄は2路線しかないため、利用対象エリアを広くしてもメリットは少ないでしょう。

東京の場合は東京メトロと都営地下鉄の2社体制で、「PiTaPa」のような後払い制の交通系ICカードがありません。そのため「マイスタイル」のような大規模な統一利用額割引サービスは難しいような気がします。いずれにせよ、大阪市内へ転勤することになれば大阪メトロのサイトから「マイスタイル」をチェックしてくださいね。

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