1秒でも速く走るため…昼間の特急は、降車専用ホームを使いません!時間帯でホームを使い分ける阪急・西宮北口駅の妙

新田 浩之 新田 浩之

「関西私鉄は主要駅で両側の扉を開く」とよく聞きます。確かに関西私鉄の主要駅には降車用ホームが用意されているところが多く、両側の扉が開きます。しかし降車専用ホームがあるからといって、いつも特急が両側の扉を開くわけでもありません。そのあたりをうまく使い分ける駅が阪急神戸本線の西宮北口駅です。

降車専用ホームがある西宮北口駅のあらまし

西宮北口駅は兵庫県西宮市にあり、阪急神戸本線(大阪梅田~神戸三宮)、今津北線(西宮北口~宝塚)、今津南線(西宮北口~今津)が乗り入れる主要駅です。今津線から神戸本線へ直通する準急を除き、すべての種別が停車します。

神戸本線の西宮北口駅には神戸三宮方面ホーム1号線・2号線と大阪梅田方面ホーム3号線・4号線があります。1号線と4号線には降車専用ホームがあり、両側の扉が開きます。現在の姿になったのは線路が十字に交わる「ダイヤモンドクロス」を廃止し、駅改築が完成した1987(昭和62)年のことです。

昼間の特急は降車専用ホームを使わない

昼間の特急は降車専用ホームがある1号線・4号線に入らず、2号線・3号線に進入します。一方、1号線・4号線には特急の発車待ちをする普通が使います。

それでは降車専用ホームがあるにも関わらず、なぜ昼間の特急は使わないのでしょうか。実は2006(平成18)年ダイヤ改正まで昼間の特急も基本的に1号線・4号線に進入していました。

2006年ダイヤ改正では特急停車駅に夙川駅が加わりました。当然、停車駅が増えれば特急は遅くなりますが、JR西日本とのし烈な競争を繰り広げていることを考えると特急をのんびり走らせるわけにはいきません!

そこで阪急電鉄は昼間の特急の最高時速を115キロへ引き上げ、ATSの改良、岡本~御影間の線形改良などを実施。停車駅が増加したにも関わらず、最大1分の時間短縮を果たしました。その結果、大阪梅田~神戸三宮間の所要時間は27分(上り27分10秒、下り27分0秒)になりました。

同時に昼間の特急は西宮北口駅2号線・3号線を使い始めました。特急の停車時間を測ると、1号線・4号線では1分前後、2号線・3号線では40秒前後でした(時間帯によって多少変わります)。また2・3号線への進入速度は1・4号線よりも少し速いです。

わずかな差とはいえ、「昼間の特急は少しでも速く走らせたい」という思いが伝わってきます。

ラッシュ時の優等列車をサポートする降車専用ホーム

それでは「優等列車にとって降車専用ホームは不要か」と言われるとそうではありません。ラッシュ時の特急は1号線・4号線に入り、降車専用ホームを使って多くの利用客をさばきます。西宮北口駅から分岐する今津北線沿線には多くの学校や大学があることから、朝ラッシュ時の降車専用ホームには学生の姿が目立ちます。

2016(平成28)年ダイヤ改正では朝ラッシュ時に運行される大阪梅田行き通勤特急が3号線から4号線に変わり、降車専用ホームを使用することに。切替の理由は通勤特急の混雑が挙げられ、大阪梅田方面ホームおよび階段の混雑緩和を目的にしています。

一方、4号線で2両の増結作業をしていた通勤急行は8両編成での運転になり、通勤特急と入れ替わる形で3号線に停車するようになりました。

このように西宮北口駅では時間帯によって、ホームを使い分けています。今後のダイヤ改正でもホームの使い方に変更点があるかどうか注目したいものです。

 

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