寝る前に食べると太るのはなぜ? 脂肪合成が活性化されるピークは午後10時から午前2時

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦

 夜遅い時間に食べると太りやすいと言われますが、実はそのメカニズムは科学的に解明されていませんでした。ところが最近ハーバード大学の研究で原因が明らかになりました。まず、遅い時間に食事をするということは、単純にそれだけお腹が減っていることになります。食欲が増進して当たり前です。

 食物は胃から十二指腸を経て消化され、小腸で栄養が吸収されます。胃の滞留時間は平均2〜3時間、脂物の食事で4〜5時間です。食事が夜遅くなると、消化吸収が始まる頃はまさに睡眠中、体をほとんど動かさない状態で、血中に糖や脂肪が取り込まれています。血液中に取り込まれた糖や脂肪はそのまま脂肪細胞に取り込まれ蓄積される、「太る」のです。

 脂肪を合成したり貯蔵するなど、脂質代謝を調節する機能を持つタンパクとして有名な「BMAL1」は時間帯によって増減し、夕方から早朝にかけて活性化され、特に午後10時から午前2時がピークになります。つまり、この時間に吸収された食べ物は脂肪合成が活性化され、脂肪としてより蓄積されやすく、太りやすくなるのです。

 また「Ucp1」という遺伝⼦から合成されるタンパク「UCP1」は、脂肪細胞のミトコンドリア内で、蓄えられた脂肪を原料として熱を発⽣させます。肥満に伴いUCP1が減少し、その減少により熱が発⽣しにくくなることで脂肪蓄積はさらに進み肥満が進⾏することが明らかになっています。

 遅い時間に食事をすると、食欲刺激ホルモンである「グレリン」の増加と食欲抑制ホルモン「レプチン」の減少、深部体温の低下、脂肪組織の分解を抑制するように働く遺伝子発現の変化などが認められ、最終的に総摂取エネルギー量が等しくても、遅い時間帯に食べたほうが体重増加につながるメカニズムが解明されたのです。朝食と昼食をしっかり摂って、夕食は早めに食べ終わる、これに勝るダイエットはないようですね。

出典:「Cell Metabolism, 2022/10/4」

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