わざわざ無人島へ行って…ごみ拾い? 深刻な海ごみ問題に向き合って活動「ペットボトルが一番多い」

谷町 邦子 谷町 邦子

ごみ拾いと言うと人目につく海水浴場で行われることが多い印象ですが、あえて誰もいない無人島を掃除する人が…。なぜ、”無人島のゴミ”なのか。その理由から、「海ごみ」を取り巻く状況と投稿者の広い視点が見えてきました。

やきさば(@YakisabaT)さんが船で向かうのは、愛媛県宇和島市の無人島「高島」。上陸する前に船の上から海岸を撮った写真にも漂着したゴミが写っています。2週間前にも清掃したばかりというやきさばさんですが、すでに大量のゴミがたまってしまい、毎回ショックを受けるそうです。

打ち上げられたゴミには、発泡スチロール製のバール(漁業用のうき)や、発泡スチロールとプラスチックのトレイ、ペットボトルなどプラスチック製のものが目立ちます。手で拾えるものばかりでなく、細かいマイクロプラスチックがたまっている場所もあり、やきさばさんはブロワー(送風機)で吹きとばし、網に集めます。

宇和島市のボランティア団体「Clean the coast(クリーン ザ コースト)」で海ごみ拾いに取り組むやきさばさんに、海ごみの現状や無人島での活動理由、そして清掃活動を続ける意義を話してもらいました。

「海岸清掃は『無人島なのに』とか、『海水浴場だから』なんて関係ありません」

――ごみ拾いのボランティアは、いつ頃、どんなきっかけで始めましたか。

「海ごみ拾いを始めたのは2020年の7月からになります。2018年に起こった西日本豪雨災害のボランティア活動で知り合った方に、海ごみ問題も深刻だと聞き、海岸清掃を共にするようになりました」

――ひと目に触れることの少ない無人島の海ごみを拾われるのは?

「海岸清掃は『無人島なのに』とか、『海水浴場だから』なんて関係ありません。地球規模で見ればほんの小さな小さなごみ処理にすぎませんが、この積み重ねが将来の地域のため、地球のためだと信じて活動しています」

――これまで掃除した場所を教えてください。

「釣り客の多く集まる九島(くしま)、みかんの産地として有名な旧吉田町にある砂浜、水産業が盛んな小池地区の海岸、夕陽がステキな下波(したば)、菰渕(こもぶち)の海岸、海はホントにキレイなのにゴミのせいで残念な由良半島の後(うしろ)地区、と今回の無人島の高島など、宇和島市全域の海岸線を活動場所としています」

「海のプラスチックごみが魚の量を超えるかもしれない」

――それぞれの場所で見つかるゴミには、どんな特徴がありますか。

「砂浜や海岸などは一般のプラスチックごみ(食品トレイや弁当の容器、梱包袋など)、消波ブロックには粗大ごみ(テレビや洗濯機、エアコンに自転車など)、人の入りにくい海岸は漂着ごみ(発泡スチロール製のバールや一般に使われる緩衝用の発泡ケース、ロープや網などの漁具)がよく見られます。発泡スチロールのバールは、岸壁や消波ブロックに波で打ちつけられて、粉々のマイクロプラスチックになり、30cmほど堆積している海岸もあります

ただ、どこの場所にでも言える事は、ペットボトルが何よりも多いです。街から流れてきたもの、近海や外国から流れ着いたもの、遊びに来て捨てて帰ったもの、ペットボトルを詰めたゴミ袋が毎回、沢山収集されます」

――ごみ拾いを継続して続けるのは大変だと思いますが…。

「このまま海ごみが増え続ければ、2050年までに海のプラスチックごみが魚の量を超えるだろうと言われています。大袈裟とかではなく、実際に海岸清掃をしていると本当にそうなるのではないかと感じています。次の世代にゴミで覆われた海を残したくない、宇和海や瀬戸内の美味しい魚をいつまでも食べ続けてほしいと願って行っています」

――ゴミを捨ててしまう人含めて、伝えたいことは?

「地球は皆さんの住む自宅です。街も海もゴミだらけだと、自宅がゴミだらけなのと同じだと思ってください。ごみ拾いしましょうとは言いませんが、まずポイ捨てしないでください。1人ひとりが適切にゴミを処理すれば、地球環境も改善され昨今の災害も減るかもしれません」

◇ ◇

環境省の「令和元年度海洋ごみ調査」によると、平成26年度から平成30年度まで国内10地点の漂着ごみを調査した結果、容積ベースでは自然物よりも人工物の割合が高い結果に。人工物の内容はプラスチック類の割合が高い地点が多かったとのこと(環境省「令和元年度海洋ごみ調査の結果について」より)。いかに考えなく、海にゴミを捨ててしまっている人がいることについて考えさせられます。

今までごみ拾いをした宇和島市の海岸や、宇和海や瀬戸内の魚についての語り口に、地元への強い想いをにじませるやきさばさん。同時に、海ごみ問題について地球全体を視野に考えて行動されています。人目に触れることのない無人島に打ち上げられたゴミも、ひとつにつながった海からきたことを思うと、無視することができないということなのでしょう。

やきさばさんが活動する「Clean the coast」は、ともに清掃に取り組むボランティアを随時募集。「興味を持たれた方は『宇和島市 Clean the coast』で検索をよろしくお願いします」とのことです。「宇和島市社会福祉協議会」や、「 宇和島 NPO センター」からも問い合わせることができます。

■やきさば(@YakisabaT)さんのTwitter https://twitter.com/YakisabaT

■社会福祉法人 宇和島市社会福祉協議会 宇和島市ボランティア・市民活動センター https://www.uwajima-shakyo.or.jp/local/volunteer.html
■特定非営利活動法人 宇和島 NPO センター 連携団体の紹介 https://uwajima-npo-center.jp/blogs/related-organizations

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