勤務中スマホが気になる部下を注意→“パワハラ”だと訴えられる 悩める50代部長「いったい何が問題だったのか」

長岡 杏果 長岡 杏果

職場で起こる問題はさまざまありますが、その中でも深刻な問題の一つが、パワーハラスメントです。2022年4月から、パワーハラスメント防止措置が全企業に義務化され、企業ではこれまで以上にハラスメントに対する意識が高まりつつあります。パワハラは決して許されることではありませんが、他者から言われたことで不快に思ったとしてもすべてがパワハラに該当するわけではありません。大手企業で管理職に就くMさん(50代・関東在住)は、部下からパワハラを受けたと言われ、人材育成に悩んでいます。

Mさんは約30人が所属する部署の部長です。Mさんには一つ悩みがありました。それは20代後半のHさんのことです。Hさんは勤務時間中にスマートフォンを触り、仕事に集中できていない様子は、誰の目から見ても明らかでした。

スマートフォンばかり触っていることも影響し、就業時間内に仕事が終わらず残業していくという日々が続いたため、MさんはHさんに注意をしました。

急な用事は仕方ないが、基本的には就業時間内は携帯電話でプライベートな連絡や動画などを見ることを控えるように伝えると、Hさんはその場で「はい。すみませんでした」と反省を口にしました。

しかし、その翌日、Mさんは上司に呼ばれ、「パワハラを受けているとHさんから相談があった」と言われたのです。

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Mさんは上司にこれまでの経緯を話しました。上司はパワハラの定義を示しながら、今回の事案はパワハラには該当しないと伝えました。しかし、部下がパワハラと感じるような言動がないように、気を付ける必要があると助言されたのです。

社員教育を担うMさんにとって、業務に支障をきたす言動があれば注意しなければいけません。しかし、その注意すべてをパワハラと言われると、人材育成の難しさを感じざるを得ません。

Mさんは上司にも同席してもらい、Hさんと話す機会を設けました。MさんはHさんに注意したとき、他の職員に聞かれるとHさんが気まずいのではないかと別室に呼んだのですが、Hさんにとってはその行為が「呼び出し=パワハラ」と感じたということがわかりました。

配慮したつもりが、反対にパワハラと認識されてしまったことから、上司はパワハラに関する研修が早急に必要と感じたようです。その後、全社員に対してパワハラ研修が実施されました。

研修で学んだ「信頼関係の大切さ」

Mさんが研修を受けたあと感じたことは、信頼関係の大切さだそうです。信頼関係が構築されていれば、ちょっとした注意や配慮したことを「パワハラと受け止められる」ことはないかもしれません。それはもちろん、信頼関係ができていれば何を言ってもかまわないということではありません。

そして、自分の気に入らないことを言われたからといって、すぐにパワハラと受け止めることや、パワハラと言われるからといって注意ができない環境も問題があります。パワハラについて定義を定め、抑止していくことは大切ですが、「風通しのよい職場環境をどうすれば作れるのか、話し合う機会も大切ではないか」とMさんは話していました。

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