給与も支給されず、子どものアレルギー情報も共有されず…「なぜ私だけ?」勤務先の幼稚園園長から受けたパワハラ被害

長岡 杏果 長岡 杏果

2020年6月1日にパワーハラスメントの防止を企業に義務付ける「パワハラ防止関連法」が大企業で施行されました。中小企業は2022年4月1日から義務化されます。パワハラは端的にいうと職場でのいじめや嫌がらせを指しますが、勤務先の幼稚園園長から執拗なパワハラを受けて退職したTさん(30代・保育教諭)に話を伺いました。

どうして?私だけ給与が支給されない

私は園長から、子どもの命に関わるような嫌がらせを受けたほか、自分だけ給与が支払われなかったり、園で起こった問題の全責任を負わされそうになったりと、耐え難い苦痛を受けました。

年度途中で採用をされたのですが、勤務初日から、多くの人がいる前で「君のようなどこの馬の骨かもわからない人間を雇ってやった」「理事会でも君のようなどこの馬の骨かもわからない人間を雇うのは反対された」と園長から言われました。この「どこの馬の骨かもわからない」とは、出身や人柄、育った環境などがわからない人をののしるときに使う言葉です。

園長からは、毎日のように人格否定や嫌がらせが繰り返されていきました。

勤務初日には提出した履歴書などの書類一式を紛失したと言われたり、給与は手渡しでしたが、私だけ支給されなかったり。

翌日も、翌々日も催促してももらえず、園長からは「君にお給料は渡せない」と言われ、手渡されたのが「謝礼」でした。契約上の手当てなどはもちろん含まれていませんでした。この時点で不信感しかありませんでしたが、怖くて何も聞けませんでした。

「子どもの症状を診て、なんの病気かくらい診断しろ!」

仕事をする上で、一番大事な子どもの既往症やアレルギーの情報ですが、一切共有されませんでした。保育の現場では子どものアレルギーや病気など命に関わることを「知りませんでした」では絶対に許されません。しかし、園長は「他の先生に一切聞くな。知りたければ一人ひとりの親に聞いてまわれ」と言って大切な情報の共有すら許されませんでした。園長が不在時に教えてくれる先生もいましたが「実は私たちもあまり知らされてなくて…」と言われ、園長の危機管理能力の低さに驚きました。

受け持っている子どもがおやつの後に、息苦しさと体調不良を訴え、私がもしかしてアレルギーかもしれないと思い、慌てて対応をしていると、たまたま近くを通りかかった園長が「症状を診てすぐになんの病気かわからないのか?そんなこともわからないのに母親か?」と怒鳴られました。確かに私には子どもがいますが、医療のプロではないので、症状を診て病気の診断や判断はできません。しかし園長は「よく、それで母親やってるよな。それで母親?最低な母親だな」と追い打ちをかけるようにまくしたて、私の人格を否定しました。さらには「園で問題が起きたら今後は君に全責任を取ってもらう」「子どもに何かあれば救急車を呼べばいいだけだろ、そんな判断もできないのか」と言われ、ここで大切な子どもの命を預かることは、この園長がいる限り無理だと思いました。

私自身、園長のパワハラにより体を壊して退職しました。ちょうど園が長期休暇に入ったこともあり、退職届は郵送しました。その後園長から一切連絡が来ることはありませんでした。近所で偶然お会いした保護者からは、私が退職した後すぐに「半分以上の先生が園を辞めてバタバタ。これから預けるのが不安だわ」と不安な胸の内を明かしてくれました。保護者の間でも園長のパワハラは有名だったそうです。

   ◇   ◇

もしパワハラにあったらどうしらいい?

厚生労働省の資料などでは、パワハラの具体例として以下のようなものを上げています。

1)身体的攻撃 (例)たたく・殴る・蹴る、人に物を投げつける
2)精神的攻撃(例)人格否定、執拗に叱る、大勢の面前で威圧的な叱責を行う
3)人間関係からの切り離し(例)1人だけ別室に隔離される、強制的に自宅待機をさせられる
4)過大な要求(例)業務とは関係のない雑用を強いられる
5)過小な要求(例)仕事を与えてもらえない 6.個の侵害(例)家族の悪口を言われる、私的領域に立ち入られる

もしもパワハラにあったときは、以下ような対応をとると良いとされています。

1)どんなことがあったのか(5W1H)を記録する、録音する、医師による診断書を取る
2)周囲に相談する
3)会社の窓口や人事に相談する
4)職場の対応が不十分のときは労働局に相談する

給与が未払いの場合や支給日の15時を過ぎても支払われない場合は、速やかに勤務先を管轄する労働基準監督署に相談しましょう。退職意向は法令で最短2週間前までに告げる必要がありますが、パワハラの場合は会社側が安全を確保する義務があるため「即日退職」でも問題はありません。

せっかく働くならお互いに気持ちよくお仕事をしたいものですね。

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