友達をたたく、物を投げる、走り回る…何度言っても止めない子どもにイライラ→それって「お試し行動」かも 対応策は

西村 猛 西村 猛

友達をたたく、ものを投げる…。こうした「やってはいけないと分かっていて、わざとする」。発達支援の事業所を運営する中で、保護者の方からご相談されることの一つです。発達特性にかかわらず、幼児期には比較的よく見られる行動ですが、やめさせようと叱れば叱るほど逆効果になる場合も多く、なかなか周囲の理解も得られず保護者も苦しむ例は少なくありません。こうした行動に隠れた理由と、対応時の留意点について、ご紹介します。

◆発達特性のある子どもによく見られるお試し行動

こうした「大人が怒るかどうかなどを試す行動や行為」は、「お試し行動」と呼ばれます。よく見られる行動としては、「やってはいけない(叱られる)ことを、わざとする」ということ。例えば

・登ってはいけないと知っていて、登る。
・ものを投げてはいけないと知っていて、投げる。
・人を叩いていはいけないことを理解しているが、叩く。
・本当は食べたいのに「食べない」、行きたいのに「行かない」等、反対のことばかり言う。

こういった行動がお試し行動がどうかは「その行動を行っている時に、大人や先生の顔を見ながらしているかどうか」を見ておくとわかりやすいでしょう。

・お母さんの顔を見ながら、おもちゃを投げる。
・先生の方をチラチラと見ながら、お友達を叩く。

こういった行動が見られたら、お試し行動が出ていると思って間違いないと言えます。

反対に、他のお友達に自分の持っているおもちゃを取られたので、怒って(反射的に)突き飛ばした、などの場合は、お試し行動というよりも感情が爆発しているだけであると言えるでしょう。つまり、お試し行動は、大人(お友達の場合もありますが)の反応を見ながら、わざと悪い行動をすることと換言できます。

◆お試し行動が見られる理由

お試し行動が見られる場合、その裏には子どもなりの何らかの理由があります。比較的よくある理由2つをご紹介します。

① 人や場面を不安に感じている(SOSのサイン)

例えば、年度替わりには、担任の先生や教室の場所が変わったりして、いつもと違う環境に置かれることがあります。その変化を感じ取り、新しい環境下でのルールや振る舞い方が分からなくなり、相手の反応を見ようとする行動につながることがあります。

② その行動自体が、「遊びの一つ」として認識してしまっている

人の反応を見ること自体が遊びになっていることが理由です。

ドアの開閉や電気のスイッチのON―OFFで状況の変化を楽しむお子さんも多くおられますが、こういった遊びと同様に、「人の反応の変化を楽しむことが遊びの一つになっている」と考えられます。

この場合は、笑いながらお試し行動をすることが多いので、見分けるポイントになります。

◆対応方法

①不安に感じている場合は、不安の要因を考える

いきなり叱るのではなく、「何が不安なのか」を考えてあげ、その不安になっている要因を取り除いてあげることが、まずするべことです。

まずは、今なにをするのかを具体的に伝えると同時に、いつまでするのかを伝えていくと見通しを持ちやすくなるため、不安軽減につながります。また、騒音や人の多さ等の環境要因が考えられる場合は、場所を変えることで、行動が落ち着くこともあります。

②笑いながらお試し行動をしている場合は、反応しない

お子さんは大人の反応の変化を楽しんでいるので、反応することがさらにお試し行動を助長させます。

状況の変化をよく見ているお子さんの場合は、大人の表情や口調の変化をいち早く捉え、ゲラゲラ笑いだすこともあります。

このような場合は、なるべく視線を合わせないようにして、いつもより声のトーンを下げ、できるだけ淡々とした対応が望ましいでしょう。反応が得られないと、面白さが半減するので、だんだんとお試し行動が見られなくなっていきます。

◆留意点

次のような対応は、子どもにとっても、また周囲にとっても良い結果にはならないため、控えましょう。

① 知らん顔をする(相手にしない)

子どもが大人の気を引こうとしてお試し行動を行っている場合、知らん顔をすることで、余計に気を引きたくなり、その行動がエスカレートすることが考えられます。

行動がエスカレートして制止が必要になった時に初めて大人が反応すると、「反応を得るためには、行動をエスカレートさせればよい」と間違った方法を覚えてしまうことにもつながります。

② 厳しい口調で叱る

大人が感情的に叱ると、大人が怒っていることは伝わるけれど、叱られている理由は伝わりません。そのため、お試し行動を制止する手立てを考えるよりも、なぜそのような行動をとるのか、その理由について考えるようにしましょう。

③ 子どもが「関わってほしい」という思いが強い場合は、じっくりと時間をかけて一緒に遊んであげる

以前、お試し行動をとった時に大人と遊んでもらえたという経験があるお子さんは、遊んでほしい時にまた同じ手段を用いるということがあります。そのような場合は、しっかり向き合って遊び、お子さんの気持ちを満たしてあげる中で、お試し行動から適切な要求行動へ変換していくようにしてあげましょう。

 

◆まとめ

・お子さんが「お試し行動」をする裏には、お子さんなりの理由が隠れていることがあります。
・不安を感じていることからその行動が起こっている場合は、安心感を持てるような関わり方をしてあげるようにしましょう。
・笑いながらお試し行動をしている場合には、大人は反応することなく、淡々と対応するようにすると、自然に減っていくことにもつながります。
・知らん顔をしたり、厳しい口調で叱ることは効果的ではありませんので注意しましょう。
・お子さんが関わってほしいという思いからお試し行動を取っている場合は、じっくりと関わってあげる中で、適切な行動に変えていけるようにしてあげましょう。

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