小・中学校、高等学校の教員などを対象に、10年ごとの講習を義務づけていた「教員免許更新制」が、7月1日に廃止されます。これに伴い、免許状更新講習の受講や免許更新の手続きが不要になったり、過去に取得しながら更新されずに失効した免許も復活することになるそうです。「教員免許更新制度」の廃止について聞いたところ、現役教員の9割以上が廃止について「賛成」した一方で、免許を持っていない人は半数以上が「反対」の立場を示していることが分かったそうです。
日本トレンドリサーチが2022年5月に、全国の男女600人を対象に「教員免許の更新制度に関するアンケート」を実施しました。
初めに、「教員免許」を保有しているか尋ねたところ、「現役の教員である」と答えた人は4.2%、「現役の教員ではないが保有している」という人は15.8%、「保有していない」人は80.0%でした。
続いて、7月から「教員免許」の更新制度が廃止されることについてどのように感じるか尋ねたところ、最初の質問で「現役の教員である」と答えた人は88.0%が「賛成」、「どちらかというと賛成」が8.0%という結果になり、教員として働いているほとんどの人は「教員免許更新制度の廃止」に賛成していることが分かったそうです。
「現役の教員ではないが保有している」という人も、45.3%が「賛成」、「どちらかというと賛成」が20.0%という結果に。「どちらかというと反対」は24.2%、「反対」は10.5%でした。
一方で、教員免許を「保有していない」人は、「どちらかというと反対」という人が最も多く33.8%、「反対」は23.8%でした。「賛成」は19.0%、「どちらかというと賛成」が23.5%となり、半数以上の人は「教員免許更新制度の廃止」に反対の気持ちがあることが分かったそうです。
各回答の理由について、以下のようなコメントが寄せられました。
【「賛成」「どちらかというと賛成」回答理由】
▽ただでさえ大変な先生という仕事を真面目に頑張っている方が、更新で煩わしさを感じなくて済む。(50代・女性・「保有していない」)
▽全員が教員をしているわけではないので10年の更新があるとそのために今の仕事を休まなければならない。(20代・女性・「現役の教員である」)
▽意味のない更新講習を受けるために授業を休むなど子供を犠牲にしているので。(50代・男性・「現役の教員である」)
▽これまで大した内容でもない研修を押し付けられて負担ばかり大きかったから。(50代・女性・「現役の教員である」)
▽弟夫婦が教員だったが、更新料も高いし教員不足の解決になる。(60代・女性・「保有していない」)
▽形だけの教員免許更新であればあまり必要性を感じないのと、教員免許更新する時間や手間をもっと別のことに使った方が良いと感じるため。(40代・男性・「保有していない」)
▽過去に教員免許をとったことがあり、それを活かしたいと思っている人が気軽に教師を始められるのは良いことだと思うから。(20代・女性・「保有していない」)
▽普通の教員は、校内研修や教科の研修会に参加しているので、免許更新制度は必要ないと思うから。(60代・男性・「現役の教員ではないが保有している」)
【「反対」「どちらかというと反対」回答理由】
▽教員の質を保つために必要だと思うから。ただ、教員としての指導や研修の実績が十分と認められる者は、更新免除や運転免許の優良講習のような簡易化という融通はあってもいいと思う。(40代・女性・「保有していない」)
▽1度取ればその後何もしなくていいというのは親の立場からすると不安。そういう方法で教員を増やそう、数を維持しようとするのではなく、給与面などで対策してほしい。(20代・女性・「保有していない」)
▽10年以上経った方が急に教員になっても生徒のためにはならないと思うから。(20代・男性・「現役の教員ではないが保有している」)
▽問題を起こした先生が簡単に復帰できそうでいやだ。(60代・男性・「保有していない」)
▽どんな免許も期限を設けた方が良い。取得した時点でその能力があっても、一生その能力を保持しているとは限らない。(80代・男性・「保有していない」)
▽子供の成長に関わる仕事だから更新制度があった方が良いと思う。教師として不適格なことをしたら即刻再教育制度等もあれば良いと思う。(40代・女性・「保有していない」)
▽別に更新に対してお金は払わなくていいと思うが、教育現場から離れた時や初心に帰るという意味でやった方がいい。(20代・女性・「保有していない」)
▽ただでさえも不祥事が多発している教員資格。さらに次々と変化していく社会情勢。教員の適正も都度確認するべきだと思う。更新期間を短くするのならば分かるが廃止とは考えられない。(60代・男性・「保有していない」)
◇ ◇
なお、公立学校での教員不足を解消するためには、どのような対策が行ったらよいのか聞いたところ、以下のようなコメントが寄せられました。
【公立学校での教員不足を解消するために必要な対策だと思うことは?】
▽給与を上げる。小学校の先生の負担が大きすぎるので、教科担任制を導入する。個々の特性、習熟度に合わせたクラス編成、又はレベル別の教科の受講を認める。(40代・女性・「現役の教員ではないが保有している」)
▽ITを有効利用し、勉強の70%はPCでやらせる。従来の教員は30%くらいに削減して、ITで出来ない勉強の部分を補う。生徒の悩み相談や部活動は教員免許を持たない善良な市民に任せる。(60代・男性・「保有していない」)
▽クラブ活動の顧問を廃止して仕事を減らせばいい。授業だけにした方がいい。土日に試合などで出勤していたら体がもたない。(50代・男性・「保有していない」)
▽親からのクレームに対応する職種を設ける。(50代・女性・「保有していない」)
▽教員が働きやすい環境を整えること。パワーハラスメントや、教員同士のいじめなどを強く取り締まることで、働きやすさが増し、教員希望者が増えるのではないだろうか。(20代・女性・「保有していない」)
▽何でも教員の責任にしない事。昔のように親に責任があると言う考え方が必要。(50代・女性・「保有していない」)
▽きちんと休みが取れて生徒と向き合える時間を確保するなど、余裕を作れる体制にする。(60代・女性・「保有していない」)
▽教員免許がなくてもできる仕事を、振り分ければいいと思う。パートでも派遣でも。(50代・女性・「保有していない」)
【出典】
▽教員免許の更新制度に関するアンケート
https://trend-research.jp/14819/
▽株式会社NEXER
https://www.nexer.co.jp