「第1志望はトイレが汚かった。
第2志望は便座が冷たかった。
第3志望の今の学校は、便座が温かくてキレイ」
受験後、そんな理由で現在通っている中学校に「大満足」だと言う息子。思わず「トイレのことしか言うてへんやん…」とツッコミを入れた…。
関西在住の母親・シバ太さん(@u_ohYeah)がXに投稿したこのエピソードは、多くの共感を集めた。実はその裏には、中学受験をめぐる親子の葛藤と、親としての後悔、そして救いがあった。
「本当は第1・第2志望に行ってほしかった」母の正直な思い
息子さんの受験結果は、第1志望・第2志望が不合格、第3志望のみ合格という厳しいものだった。
「大学進学を考えると、どうしても第1・第2志望に受かってほしいという親の気持ちが強くて……。一番頑張ったのは息子なのに、合格を素直に喜びきれなかった自分を、今でも反省しています」
最後の合格発表が出揃い、進学先が決まった直後のこと。息子さんは泣くこともできず、ただ黙って立ち尽くしていたという。
「手が震えていて、顔もこわばっていました。喜びも悔しさも、どこにも出せなかったんだと思います」
その姿は、今でも母の記憶に深く残っている。
「中学受験が、息子にとって“偏差値の低い学校にしか受からなかった辛い記憶”になってしまうのではないか。それが一番怖かったです」
「この学校が一番合ってた」息子の言葉に救われた瞬間
そんな中で聞いたのが、今回の「トイレ」エピソードだった。
「第1・第2志望に届かなかったことを、卑屈にも引け目にも感じず、“自分の力で受かった学校こそ至高の環境”と屈託なく話す息子の姿に、私自身が救われました」
母としては拍子抜けするほどの理由だったが、息子さんにとっては揺るがない価値基準だった。
「『トイレ以外に判断基準はなかったんかい』と思いましたが(笑)、結果的に本人が心から満足している。それが何よりでした」
実は“無頓着”ではなかった…息子が密かに持っていたこだわり
学校説明会や見学でも、息子さんはほとんど反応を示さなかったという。
「何事にもこだわらない子なので、学校にも特別な憧れはないのかなと思っていました」
しかし実際は違った。
「『トイレの汚い学校はアカン』という、唯一にして最大のこだわりを、心の中でずっと持っていたそうです。小学生の頃は、うまく言語化できなかっただけだと本人は言っていました」
「分相応」の環境が、息子の自己肯定感を育てた
現在、息子さんは今の学校に満足し、のびのびと学校生活を送っている。
「周りが自分と同程度の学力の子たちだからこそ、“少し頑張れば上位に行ける”という手応えがある。それが自己肯定感につながっていると感じます」
もし無理にレベルの高い学校に進んでいたら、同じ結果にはならなかったかもしれない…そう母は振り返る。
トイレは校風を映す? 保護者として気づいた視点
正直に言えば、母親自身は学校選びでトイレを重視していなかった。
「私の頃はボットン式でしたから(笑)。今の学校のトイレはどこもキレイだと思い込んでいました」
しかし投稿後に寄せられた声で、考えが変わったという。
「トイレの清潔さは校風や生徒の態度を映す、就職先や店選びでも参考になる――そんな意見が多く、息子の視点は的外れではなかったと気づきました」
これから中学受験を迎える家庭へ伝えたいこと
最後に、同じように受験を控える家庭へ、母としてのメッセージを語ってくれた。
「偏差値にとらわれず、“確実に受かる学校”を一校でいいから受けてほしいです。親が思う良い学校と、子どもに合う学校は、必ずしも同じではありません」
そして、何より大切にしてほしいこと。
「たとえ偏差値の低い学校でも、合格した事実をまず全力で讃えてあげてください。私はそれができず、今も後悔しています」
息子さんは最近、こう言ったという。
「この学校が一番合ってた。トイレもキレイで温便座やし。中学受験しといてよかった~」
その一言が、母にとって何よりの救いだった。