人の気持ちを理解させるため「嫌なことをしたら、目には目を」!?発達障害の子どもへの理不尽な指導に衝撃

長岡 杏果 長岡 杏果

ひと昔前まで「発達障害」は、社会の中であまり知られていませんでしたが、最近では支援体制の整備が進められています。しかし言葉の認知は進んでも、実際に一人ひとりがどういったことに生きづらさや生活の困難を感じているのかまでは、知られていない現状もあります。関東在住のNさん(30代)には、発達障害のあるYさん(5歳)がいますが、子どもが通っているこども園が障害の特性を正しく理解していなかったため、とても悩んだ経験があるといいます。

「人の気持ちがわからない子」というレッテル

Yさんは、近所のこども園に通っています。入園する際に、発達障害であることは伝えてあり、こども園の先生からは障害に対する支援は可能であるといわれていました。

Yさんは他者とのコミュニケーションの場面で、相手の気持ちを読み取るのが苦手だったり、自身の強いこだわりが見られたりする「自閉スペクトラム症」です。お友だちと仲よくしたいと思って行う言動が、時にお友だちにとって嫌な行動となって、トラブルになる場面もありました。

そんなある日、その日の園での様子が書かれている連絡帳を見ると、「人の気持ちがわからない子なので、お友だちとのトラブルが続いています。こちらで修正していきます」と書かれていました。

NさんはYさんの支援という大変なことを先生にお願いしているとは思いながらも、「人の気持ちがわからない子」という表現に大きなショックを受けたのです。

「人の気持ちを理解させるための方法」とは

Nさんは何度もYさんに人の嫌がることはしないようにと伝えていましたが、Yさんはお友だちが嫌がることを理解するのが難しく、一緒に遊びたい思いから嫌がることをしてしまうのも、Nさんはわかっていました。

そして、Nさんが連絡帳の一文にショックを受けた数日後、お迎えに行くと先生から驚くべき言葉を言われたのです。

「今日、お友だちのタオルを笑いながら濡らしたんです。だから人の気持ちを理解させるために、Yちゃんのタオルを濡らしました。これから、お友だちにやったことを同じように私もします」

まるで「目には目を、歯には歯を」のような対応で、Nさんは耳を疑いましたが、その場では先生に謝罪することしかできませんでした。

家に帰り、なぜお友だちのタオルを濡らしたのか聞くと、「ご飯のときに、先生がいつも机拭いてくれるから。タオルあったから、お手伝いしようと思ったの」とニコニコしながら話しました。

Nさんが「それなら、自分のタオルを使うように」伝えると、Yさんは「Yのタオルだけね、みんなと一緒のところにないの」と答えたのです。その言葉を聞いてNさんは、涙が止まりませんでした。Yちゃんのタオルがみんなと同じ場所にないのは、タオルを必要としないときにYちゃんがタオルを持ち歩いてしまうため、先生が支援の一つとして違う場所に保管していたからでした。

「私のほうが大変なんです!」と泣き出す先生

Nさんは先生と園長先生に面談を申し込み、こども園での様子を聞きました。園長先生は、クラスの先生の行為を把握しておらず、驚いていました。その一方で、先生は「私のほうが大変なんです。Yちゃんを見るのは正直、ストレスです」と泣き出しました。

Yさんが先生にとって大きな負担になっていると感じたNさんは、転園も考えましたが、園長先生からはこれからしっかり支援していくとの言葉をもらい、そのまま通園することにしました。

Nさんは同じような経験をした方は、きっとたくさんいるのではないかと話してくれました。多様性や共生社会が推進される時代となり、障害特性や望ましい対応について、知る機会を増やすことも大切なのではないでしょうか。

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