血圧が急激に変化することで心・血管疾患を引き起こす「ヒートショック」。とりわけ冬の時期に高齢者が発症するケースが多いと言われています。今回はヒートショックが起こる仕組みや症状、同居する家族も知っておきたい予防方法について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――冬場に多いとされるヒートショックは、どのようなものでしょうか?
ヒートショックとは「急激な温度変化によって体がダメージを受けること」を指します。暖かい場所から寒い場所へ移動すると血圧は上がりますし、逆に寒い場所から暖かい場所へ行けば血管が開いて血圧はぐっと下がるわけです。この血圧の急な変動が血管や心臓の病気を起こすきっかけになります。
――家の中であっても、特に入浴する際には注意が必要だと聞きます。
そうですね。暖かいリビングから寒い脱衣所・浴室に移動し、さらにお風呂で熱いお湯に浸かると体が感じる温度差が非常に大きくなります。すると血圧の乱高下に伴って脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などを発症してしまうのです。
――どのような方が発症しやすいのでしょうか?
65歳以上の高齢者、高血圧や糖尿病といった動脈硬化の傾向がある人は注意が必要です。
――予防するためには、どういった方法がありますか?
ヒートショックは10℃以上の温度差がある場合が危険だと言われています。ですので、入浴する時は前もって脱衣所と浴室を暖めておくと良いでしょう。近頃は暖房装置が付けられていることもありますので、ぜひ活用してください。暖房がない場合でも、湯船のふたを開けておいたり、あらかじめ洗い場にシャワーをかけたりしておけば蒸気で浴室全体が暖まります。少しの工夫をしていただくことで、ヒートショックは予防できると思います。
――お風呂で熱いお湯に浸かるのが好きな高齢者の方も多いですが、湯温にも注意が必要でしょうか?
はい。ぬるめの40~41℃程度に設定し、なるべく時間をかけて温まっていただきたいです。
――浴室で突然倒れるとなると、ご本人はもちろん同居している家族も慌ててしまうと思います。日頃からの心がけが大切になりますね。
そうですね。入浴時以外にも、体が感じる温度差をできるだけ少なくするように意識してみてください。冬は室内と外気の気温差が大きいので、外出する際は入念な防寒対策を。特に首周りは大きな血管である頸動脈が通っているので、冷えやすい場所です。マフラーを巻くなど暖かくしてお出かけください。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科