指定難病に指定され、脳の血管が詰まってしまうという、もやもや病。かつて歌手の徳永英明さんも罹患したことで、病名を聞いたことがあるかもしれません。脳卒中の原因の1つとしても挙げられるこの病気について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――もやもや病とは、いったいどういった病気なんでしょうか?
見えたことからつけられた名前なのです。このもやもやとした血管は、内頸(ないけい)動脈と呼ばれる太い血管が、どんどん細くなってしまったことで代わりにできた、細く弱い血管を指します。一般的に脳卒中を引き起こす原因の1つと考えられており、脳梗塞にも脳出血にもなりうると言われています。発症原因については未だ解明されていないのですが、特徴としては、若い人の方がかかりやすいという点が挙げられ、同じ脳卒中であっても、加齢による動脈硬化が原因の脳卒中とは大きく異なるんです。
――初期症状としては、麻痺が多くみられるのでしょうか?
そうですね、発症場所にもよりますが、大きな症状としては麻痺が挙げられます。ほかにも、呼吸をたくさんすることで血液中の炭酸ガスが抜け、それにより脳に十分な血液が供給されなくなってしまい、脳梗塞に似た症状が起こることもあります。
――患者さんの割合は多いのでしょうか?
いえ、もやもや病は日本国内で難病に指定されており、現在日本には1万6千人ほどの患者さんがいらっしゃいます。
――病気の発見方法は血管撮影が主になるんでしょうか?
そうですね、画像検査によって発見することが可能です。MRI検査を行った際に、大きな血管がない場合にはもやもや病である可能性が出てきます。
――治療は可能なんでしょうか?
薬などの内科的な治療は難しく、また、発症・進行原因も不明なため、現状は発症後に経過を追いながら血管不足を補う手術を行っています。しかしながら、生えてくる血管そのものが細いため、出血のリスクは残ってしまうんです。もやもや病は、睡眠不足などの生活習慣の乱れにより発症を促進してしまう可能性も考えられますので、健康維持・予防にはくれぐれも気をつけて過ごしていただきたいですね。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科