コロナ禍における「子育て家庭の格差」が問題になっていますが、経済的な困窮は、子どもの誕生日の体験にも影響を及ぼしているようです。2歳〜10歳程度の子どもを持つ家庭に聞いた調査によると、困窮家庭は約3割以上が誕生日のプレゼントを用意できず、誕生日のケーキも2割近くが準備できていませんでした。いずれも一般の家庭では9割以上が準備できていたそうです。
クリスマスイブの夜に小さな子どものいる家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」などを行っているNPO法人のチャリティーサンタが、2021年10月~12月に実施した「Withコロナ時代における困窮家庭の子どもの『体験格差』について」の調査です。「子どもの誕生日」の体験について、「困窮する子育て家庭(以下『困窮家庭』)」2118世帯と、「それ以外の子育て家庭(以下『一般家庭』)」876世帯に聞きました。
子どもの誕生日に「行ったもの・準備したもの」を聞いたところ、「ケーキ」(一般家庭:96.81%/困窮家庭:81.26%)、「プレゼント」(一般家庭:93.84%/困窮家庭:66.02%)、「部屋の飾りつけ」(一般家庭:59.86%/困窮家庭:30.77%)といった回答が続きました。
困窮家庭と一般家庭の差が特に顕著にあらわれたものとしては「(家庭内での)特別な食事」(一般家庭:53.14%/困窮家庭:24.82%)、「外食」(一般家庭:23.49%/困窮家庭:7.17%)、「レジャーなどのお出かけ」(一般家庭:21.66%/困窮家庭:5.00%)といった項目があったそうです。また、「誕生日を一切お祝いしていない」と答えたのは困窮家庭が約5%だったのに対して、一般家庭は0.6%だったといい、約10倍の差が出ていたそうです。
子どもの誕生日を準備する中で、どのような感情になったかを聞いたところ、「楽しい(楽しみ)」(一般家庭:93.50%/困窮家庭:65.36%)、「嬉しい」(一般家庭:77.31%/困窮家庭:54.27%)という回答があった一方で、「プレゼントの準備が大変」(一般家庭:18.36%/困窮家庭:27.61%)、「お金がかかって大変」(一般家庭:19.27%/困窮家庭:47.99%)、「切ない」(一般家庭:3.42%/困窮家庭:21.14%)、「しんどい」(一般家庭:2.05%/困窮家庭10.34%)という回答も。
一般家庭では子どもの人数が増えると「楽しい」「嬉しい」が増えていたそうですが、困窮家庭ではそれらの感情が減る傾向にあったといいます。特に困窮家庭では、「切ない」が約21%で一般家庭の7倍、「しんどい」は約10%で一般家庭の5倍となっていました。
子どもの誕生日で「してあげたかった(けれどしてあげられなかった)」エピソードを聞いたところ、以下のようなコメントが寄せられたといいます。
▽休校になったときに、家にネット環境がなくてオンラインでの課題ができず、子どもに肩身の狭い思いをさせてしまいました
▽室内で遊ぶおもちゃを買ってあげたかったが経済面で買ってあげられなかった
▽1番下の子の一歳のお誕生日の日に、誕生児には食パンにヨーグルトを塗ってサツマイモを飾ったケーキを用意したが、上の子たちの分のケーキが無くて、1番上の子が静かに泣いていた
▽私が体調を壊し、働けなくなり、日々の生活が大変苦しくなってしまいました。子どもはもし私がいなくなるのなら、自分も一緒に死にたいと泣きながら寝ます。私もとても辛いです
▽子どもが焼肉食べたいとか外でご飯を食べたいと言ってきても金銭的に苦しくて連れていけなかった事、新しい服が欲しいと言われた時も我慢させてしまった事、子どもが求めている事にほとんど応えることができなかった。そのため子どもは、どうせ言っても無理だから、と要求してこなくなりました。それが申し訳なくて辛いです
▽新しい本を買ってあげたい。新しいドリルを買ってあげたい。パン屋さんのパンを買ってあげたい。身体を動かすのにボールを買ってあげたい。小さなことができないです
▽おまつりや地域のイベント、無償や安いイベント等も無くなり、無料で行ける動物園や水族館等も閉鎖や予約制になったり…。お金が無い家には、どこにも連れて行ってあげることが出来なくなりました
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調査を行った同法人は、「子育て家庭の中でも困窮家庭がよりしんどくなり、さまざまな子どもの体験をあきらめている割合が相対的に高いことと同時に、保護者はあきらめさせた経験を通じて、親子ともに劣等感やあきらめを感じることが明らかに増えていることがわかりました」と説明しています。