ドローン攻撃でペルシャ湾一気に緊迫 中東への石油依存度9割を超す日本のリスクは

治安 太郎 治安 太郎

日本では安全でリッチなイメージが強い中東UAEの首都アブダビで17日、国営石油会社の燃料貯蔵施設や国際空港の近くに攻撃用ドローンなどが着弾して火災が発生し、これまでにインドやパキスタン国籍の3人が犠牲となった。UAE外務省は同日、首都アブダビを攻撃したイエメンの親イラン武装組織フーシ派に対して報復を宣言した。既に、UAEと連携するサウジアラビア主導の連合軍が21日までにイエメンにあるフーシ派の施設を攻撃し、60人が犠牲となった。

フーシ派は長年イエメン内戦に加担するサウジアラビアやUAEへの報復を示唆し、実際近年はサウジアラビア領内へのミサイルやドローンによる攻撃を繰り返している。しかも標的となるのはサウジアラビア経済の心臓である石油施設が多い(首都リヤドに向けてミサイルが発射され、サウジアラビア軍がそれをリヤド上空で撃墜することもある)。たとえば、2020年11月、フーシ派はサウジアラビア西部の第二の都市ジッダにある石油関連施設に向けてミサイルを発射し、国営石油会社サウジアラムコが所有する石油タンク1つが被害を受けた。また、2021年3月には、首都リヤドにある石油精製施設が無人機6機によって攻撃を受けて火災が発生した、同石油精製施設への攻撃では人的被害が出なかったが、サウジアラビアのファイサル外相はその後、フーシ派からの攻撃が相次ぐことから、石油施設などへの攻撃を防止する対策を徹底すると明らかにした。しかし、2019年8月、フーシ派がサウジアラビア南東部にあるシェイバ油田(Shaybah)をドローン10機で攻撃したことがあるが、シェイバ油田はイエメン北西部のフーシ派の支配地域から1000キロメートル以上も離れており、フーシ派の高性能な攻撃能力が今でも大きな脅威と言えよう。

米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は12月下旬、中東の安全保障についての報告書を公開し、フーシ派によるサウジアラビア領内への攻撃が2020年からほぼ倍増していると発表した。同報告書によると、2021年1月から9月までのフーシ派による攻撃は月平均78回に上り、前年の月平均38回から大幅に増加し、また弾道ミサイルや巡航ミサイルだけでなく、安価な値段で製造可能な無人ドローンなど頻繁に使用しているという。

このような背景の中、フーシ派の報道官は1月22日までに声明を発表し、今後もUAE領内への攻撃を続けることから、UAEに展開する外国企業に対して撤退するよう警告した。イラクやシリアで活動するイスラム国などのイスラム過激派に比べ、フーシ派はイエメンで一定の領域を支配し、より見える形で活動していることから、この警告はより具体性があろう。また、今回の攻撃は国家間関係にも影響を及ぼしている。バイデン政権は1月19日、首都アブダビがフーシ派から攻撃された件で、フーシ派を国際テロ組織に再び指定するかを検討していると明らかにした。フーシ派は資金的、軍事的支援をイランから受けるなど同国と密接な関係にあり、イラン核合意への復帰を目指すバイデン政権は発足直後にフーシ派のテロ組織指定を解除した。解除の背景にはイランへ歩み寄りを示す狙いもあっただろうが、フーシ派の強硬姿勢がバイデン政権の方向性を変えようとしている。仮に再指定となれば、米国とイランの関係は再び悪化する方向へ向かうだろう。

我が国の中東への石油依存度は今日9割を超えている。しかもサウジアラビアが1位、UAEが2位となっており、今後の情勢が大きく懸念される。しかもフーシ派を巡る情勢は、サウジアラビアとイランの中東の地域大国間同士の緊張を高めるという潜在的リスクを内在しており。中東情勢の緊張悪化は日本のエネルギー安全保障を脅かす。石油輸入先の多角化など中東依存を下げる対策が今後必要だろう。

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