藤井四冠に提供「かわいい」と話題「くま最中」 行列から2カ月余り、どうなった?

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 2021年10月下旬、京都の和菓子が突如話題となりました。京都市右京区の「御室和菓子 いと達」が提供する「くま最中」です。将棋の竜王戦に臨んだ藤井聡太4冠が食べ、「かわいい」として注目されたのです。藤井さんが食べたと報道された直後から店の前には大行列ができました。その後、2カ月余りたってどうなったのか、いと達を営む夫妻に聞きました。

 いと達は仁和寺(右京区)の近くにある和菓子店です。店は2019年10月のオープンです。京都の老舗和菓子店で修業した伊藤達也さん(37)が営みます。

 話題となったくま最中ですが、幅広い世代に和菓子に親しんでもらおうと、クマ好きな妻の万理さん(38)のアイデアを得て達也さんが開発。21年2月から販売しています。かわいさだけでなく味にもこだわり、酬恩庵一休寺(京都府京田辺市)の名物で、室町時代の僧・一休が製法を伝えたとされる「一休寺納豆」をあんに混ぜているのが特徴です。

 いと達と竜王戦の縁は20年11月に行われた豊島将之竜王と羽生善治九段の対局時にさかのぼります。この対局の際2人の棋士は、いと達の包み餅を食べたといいます。

 それから1年。今回も10月22、23日に竜王戦が仁和寺で行われることになりました。対局したのは豊島将之竜王(当時)と藤井聡太3冠(同)。対局前日にくま最中の提供が決まりました。くま最中は、藤井さんのおやつとして出され、対局を中継するインターネットテレビで紹介されました。

 「放映されて5分後くらいだったと思います。くま最中を求めて藤井さんのファンの方が来られました」。万理さんは振り返ります。すぐに問い合わせの電話が殺到。翌日以降、午前10時の開店前に行列ができたといいます。かつては通信販売でも注文を受け付けていましたが、テレビで流れた翌日の10月23日に大量の注文が入ったため、現在は中断しています。職人は達也さん1人のため、現在でも10月23日に受け付けた分のくま最中の発送を続けているそうです。

 11月に入ると紅葉シーズンを迎え、京都の紅葉観光を兼ねて店へ足を伸ばす人は引きも切らなかったといいます。12月に入り慌ただしさはようやく落ち着いてきたものの、最近でもくま最中が30分で売り切れる日があるといいます。

 現在販売しているくま最中は4種類で300~400円。アイシングという技法を使いデコレーションされており、くまがマスクを着けたり、ちょうネクタイを着用していたりするように見えます。足先が竜の爪のようになっている竜王戦仕様のものもあります。

 達也さんは店や最中が話題になったこと以上に「地域の人に『有名になって良かったね』と言ってもらえることがうれしい」と語ります。くま最中については「見た目のかわいさだけでなく、味も良いと言ってもらえればうれしい」と話しています。

 いと達は水曜日と日曜日が定休です。1月4~9日は休みです。くま最中は営業日の正午発売です。

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