兵庫県内には山陽新幹線の駅が4駅(新神戸駅、西明石駅、姫路駅、相生駅)があります。この中で西明石駅はほとんどの「のぞみ」が通過しますが、なぜか1日上下各1本のみ停車します。西明石駅に止まる希少価値の高い「のぞみ」の意義を考えてみました。
山陽新幹線・西明石駅はどんな駅?
西明石駅は兵庫県西部の明石市にあります。明石市の中心駅は東隣の明石駅ですが、西明石駅も明石市にある新幹線駅として存在感を示しています。
西明石駅には山陽新幹線の他にJR神戸線(山陽本線)が乗り入れています。同駅はJR神戸線の複々線区間の西端にあたり、多くの普通電車が折り返します。もちろん新快速や快速も停車し、運用上も重要な駅です。
山陽新幹線西明石駅は山陽新幹線新大阪~岡山開業時の1972(昭和47)年に開業しました。現在は各駅停車タイプの「こだま」と京都~岡山間を各駅に止まる「ひかり」が主に停車します。一方、ほとんどの「のぞみ」は通過し、昼間は上下各毎時1本しか停車しません。
上りは東京駅に9時前に着くダイヤ
ところが時刻表を見ると上下各1本のみ「のぞみ」が止まります。西明石駅に停車する「のぞみ」は6時01分発「のぞみ80号」東京行きと23時23分発「のぞみ113号」岡山行きです。「のぞみ80号」の西明石~東京間の所要時間は2時間50分です。しかも西明石駅始発である点も見逃せません。
なぜ「のぞみ80号」と「のぞみ113号」は西明石駅に停車するのでしょうか。考える上でヒントとなるのは「のぞみ80号」は西明石駅の上り初電、「のぞみ113号」は同駅の下り終電という事実です。
「のぞみ80号」の次は6時41分発「こだま830号」新大阪行きです。西明石駅よりも乗降客数の少ない相生駅の上り初電は6時20分発。早朝の出張を考えれば初電が6時30分以降は遅い。
また自動車を使うと西明石駅から約1時間(グーグル調べ)でアクセス可能な神戸空港の存在を考えるとうかうかできません。神戸発東京(羽田)行き1番機は神戸空港7時05分発、東京(羽田)8時15分着(2021年12月発着便)です。
しかし姫路駅始発「のぞみ82号」が西明石駅に停車すると、姫路・西明石・新神戸・新大阪・京都と5駅連続停車となり、「のぞみ」の性質を考えると難しい。そこで西明石駅始発「のぞみ」が設定されたと考えられます。
「のぞみ80号」の東京駅着は8時51分となり、9時前に東京駅に到着する絶妙なダイヤです。
東京に20時30分まで滞在できる「のぞみ113号」
上りと同じ要領で下りも検証してみましょう。「のぞみ113号」の1本前に西明石駅に停車する列車は「こだま881号」岡山行きで、西明石駅を23時04分に発車します。
新大阪駅で「こだま881号」に乗り換えるには、東京駅19時51分発「のぞみ109号」に乗車する必要があります。東京(羽田)発神戸行き最終便は東京(羽田)20時20分発ですから、東京駅20時前発の終電は早いように感じます。
かと言って、姫路駅に止まる「のぞみ111号」を西明石駅に止めると、上りと同様に京都~姫路間が連続停車となりバランスが悪い。そこで東京駅20時33分発「のぞみ113号」を西明石駅に止めることで、西明石駅利用者に配慮しているのでしょう。
もちろん運用上や設備面の理由も考えられますが、調べれば調べるほど「うまくできたダイヤだなあ」と感心しました。
西明石駅がある明石市は2020年の国勢調査で人口増加率が62中核市で1位になり、人口は30万人以上を突破しました。また子育て政策が充実しているため、子育て世代の移住が目立っている点がポイントです。
明石市の発展を考えると西明石駅の存在感はますます増すでしょうし、ビジネスパーソンにとっては早朝・深夜とはいえ東京出張を「のぞみ」で済ませられる点は大きなメリットだと思います。