古代エジプト文明の魅力を様々な角度から掘り下げ、これまでにない形で紹介する展覧会「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」が20日、兵庫県立美術館(神戸市)で始まった。目玉は12点の棺が直立した状態で並べられた“立体展示”。また、最新型のCTスキャンでミイラを解析した結果を世界で初めて公開するエリアもあり、監修を務めた中部大学の中野智章教授(エジプト学、考古学)は「古代エジプトをテーマにした展覧会はこれまでに日本で何度も開かれているが、今回は一歩先を見通す内容になっている」と胸を張る。
200年以上の歴史を誇るオランダのライデン国立古代博物館は、オランダ王国の初代国王ウィレム1世によって1818年に設立された。同館の多岐にわたる収蔵品の中でも、古代エジプトに関するコレクションは約2万5000点にも上り、ヨーロッパにおける5大コレクションのひとつとして知られている。
今回の「古代エジプト展」では、ミイラや副葬品を含む厳選した250点を借り受けて開催。ライデン国立古代博物館によるサッカラ遺跡などの調査や関連する遺物を紹介する「エジプトを探検する」、石碑やパピルスなどから古代エジプト史を通覧する「エジプトを発見する」、棺の立体展示などから死生観を読み解く「エジプトを解読する」、そしてCTスキャンなどの現代科学を駆使してミイラの謎に迫る「エジプトをスキャンする」という大きく4つのテーマを設け、日本人にも広く親しまれる古代エジプト文明に新しい角度から光を当てる工夫を凝らしている。
中野教授や同館の学芸員らが「目玉のひとつ」と位置づけるのが、木棺を直立させて並べたエリア。棺はいずれも2mほどの高さがあり、対面して細部までじっくり見ることができる面白い趣向だ。棺の蓋を外し、内側に描かれた絵も見られるようになっており、まだ鮮やかさを残す彩色や精緻に描き込まれたヒエログリフが目を引く。
「エジプトをスキャンする」のエリアでは、最新型のCTスキャンによるミイラの分析結果を公開。40歳から52歳の頃に亡くなった中年女性のミイラからは、歯の欠損や癌の痕跡、足の関節炎などが確認されたという。さらに腹腔には土製とみられる謎の人形も。これらの分析結果は、パネルや映像でもわかりやすく紹介している。
1965年に日本で開催された「ツタンカーメン展」には、約295万人が押し寄せ、日本の美術展史上1位の総入場者数を記録した。中野教授によると、それ以降もエジプトをテーマにした展覧会は日本で度々行われ、その数は実に約30にも上るという。
新しい切り口での見せ方を追求した今回の「古代エジプト展」。中野教授は「黄金やミイラなどの物珍しさではなく、エジプト考古学の過去、現在、未来を見通すことを意識した。これまでのエジプト展とは一線を画す展覧会になっていると思う」と自信を覗かせ、さらにこんな期待も口にした。
「1822年に象形文字が解読され、100年後の1922年にはツタンカーメン王墓が発見された。その100年後に当たる2022年にまた何か新しい展開があるかも…」
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「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」は11月20日から2022年2月27日まで、兵庫県立美術館で開催。当日1800円など。予約優先制。