国民が政治に求めるもの、政治がなすべきこと
「世代交代」に関して、少し思うところがあります。
もちろん、いわゆる「古い政治」の悪しき因習を変えることや、年齢に関わらず、発想を柔軟にする、めまぐるしい社会の変化やニーズを的確にくみ取るといったことは、必要なことです。若い世代の意見やエネルギーが、きちんと国の政策や党運営に取り入れられることも大切ですし、そもそも、若手や女性の登用というのは政治だけではなく、日本のあらゆる分野で、もっと進められるべきことです。
他方、一般論としても、「政治」の世界の特殊性にかんがみても、高い見識や、豊かな経験や人脈といった、長い年月をかけて積み重ねてきたものの意義も、非常に大きいのだと思います。
「政治」が考えるべき対象は、全国民です。すべての世代、あらゆる職業、あらゆる思想信条、様々な人生、多様な苦しみや悲しみを持つすべての国民を理解し、守り、ともに、希望を持てる国を造っていかねばならないのです。そうした幅広い方々の思いを理解し反映した上で、政策を具現化していくためには、当然、幅広い世代による国家運営と、長年の様々な経験から培われた見識や実行力が、不可欠だろうと思います。
また今回は、選挙戦によるものだけではなく、伊吹文明元衆議院議長をはじめとするベテラン議員の引退がありました。幅広い経験見識を基に、派閥や与野党の枠を超えて、「政治はかくあるべし」という薫陶をされ、ときには政権に厳しいことも述べ、議論が紛糾してまとまらないときも最後ビシッとまとめ、皆がそれに従う――そういった貴重な「重し」がなくなることの影響も、今後出てくるように思います。
政治は、苛酷な仕事です。
与野党ともに、青壮老、それぞれの知見と能力とエネルギーを融合させ活用し、国民の不信を受けとめ、期待に応え、この「一見穏やかだが、実は深刻な危機下」にある国を盛り立てていただきたいと思います。