「先生」から「寄り添ってくれる人」へ、大物議員落選が意味するもの 衆院選を考察<後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

「大物議員落選」を考える

今回「大物議員」が落選し、世代交代加速か、といったことが言われます。ただ、「大物議員」と言われる方の置かれた状況も選挙結果もいろいろで、変わらず圧勝した方も多くおられますので、あまりにストーリーを単純化し過ぎるのは、恣意的かつ状況を見誤るのではないかと思います。落選の場合も、各々の候補者によって、要因は異なります。

そういった視点で見てみると、基本的にどんな状況でも、あまり票を減らさないのは、①誰もが納得する歴史ある名家、②地元で巨大な経済力を有する場合、等ですが、③国会や地元で他人のために本気で力を尽くす方・面倒見の良い方も、変わらず強いな、と思いました。(もちろん、日本の中のどの地域であるか、対立候補がどういう人か等によっても、状況は変わりますが。)

一般論として、「求められる政治家像」が変わってきた、という印象は受けます。昔は国会議員はまさに『先生』で、権威というか、その地域のドンとして「俺に任せておけ」みたいなものが求められていたのだろうと思います(し、今も地域によってはそういう昔ながらのニーズもあると思います)が、今は、能力があることは当然として、その上で、親しみやすさや、一緒に地域のためにがんばりましょう、といった、「同じ目線でやっていく人、寄り添ってくれる人」が受け入れられやすいのだと思います。「あからさまな大物感」が逆効果になることもあるわけです。そうするとおのずから、新しい、若い世代の候補が受ける、ということになります。今回重鎮議員を破った候補に、30,40代の方が多かったということはいえると思います。

与野党問わず、長年日本のために尽力されてきた方々ですから、敬意を表しつつ、個別ケースについて、少し考えてみたいと思います。

石原伸晃元環境大臣は、野党共闘の影響を大きく受けました。2012年以降の衆院選における東京8区の野党の得票を合計すると、石原氏の得票を超えていましたので、今回逆転が起こることは想定されたことでした。共闘の象徴としてメディアの注目を浴びたことも作用したと思います。ブランドで勝てる時代ではなくなった、ということもあり…。

甘利明前幹事長は、これまでずっと大差での勝利だったこともあり、幹事長として全国の応援に出て地元に戻らない、ポスターや演説内容などの戦略ミス等、いろいろあったと思います。「落選運動」も行われました。

野田毅元自治大臣(16期)のところは、保守分裂選挙でした。元々、野田氏と林田彪氏の二人が自民党の議員として、コスタリカ方式で小選挙区と比例1位に交代で立候補してきていました。林田氏の後任が今回の西野氏(43歳)で、つまり、自民党同士の争いの中で、若い候補が勝った、と言う話です。

立憲小沢一郎氏の小選挙区落選は、時代の変化を感じました。後援会の高齢化等も指摘されますが、この影響は実は大きく、活動量が減少することや昔ながらの手法を変えられない、往時を知らない若い人には浸透しづらい、といったこともあります。一方、勝利した藤原崇氏(38歳)は、地道に地元回りを続け、そして今回は、小沢氏と縁の深かった平野達男元参院議員や黄川田徹元衆議院議員の支援も受けました。構図の変化が確実にあったのです。

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