アベノマスクは歴史のひとこまに 沖縄の博物館が展示「50年後の人々に紹介する資料の一つ」

竹内 章 竹内 章

令和の歴史に新型コロナウイルス禍が深く刻まれる中、沖縄の学術施設が、展示品の一つにコロナ対策の目玉とされ、海外メディアが「冗談か」と報じたアベノマスクを選びました。後世の人たちは、この布マスクを見て何を思うでしょうか。展示の意図について担当者に聞きました。

京都大学OASES project(@OASES_miyako)さんが「沖縄市立郷土博物館、すでに『アベノマスク』が収蔵品として展示されてました。」のツイートとともに、あの布マスクの画像を公開すると、リプライや引用ツイートでさまざまな声や意見が上がりました。

「博物館は、かつての世相や遺物を展示することで、未来に過去を伝える重要な役割があります。これはそれに当たってますし、何ら遜色ない展示品だと思います」「学芸員さんのセンスの良さに脱帽」「貴重な歴史資料」などと、展示品として布マスクを選んだことを評価する声が見受けられます。「50年後の修学旅行生『ぷっ、、、、ははははははは!!!!ww』」「後世に語り継ぐべき世紀の愚策」といった辛辣な声もあれば、「いわゆるスピード感もって博物館入りを果たしたと」と元総理の言い回しをもじったコメントも。一方、「一年前はマスクがちまたになく、重宝したことを伝えてくれます」「大切に使わせていただきました」と評価する声もあります。

布マスクが展示されていたのは、沖縄市の市立郷土博物館で10月22日から始まった新収蔵品展。2020年度に博物館が収集したコレクションをお披露目したかたちで、布マスクには以下のような説明文があります。

  “2020年、新型コロナウイルス感染症の対策として日本中に配られたものです。「アベノマスク」と呼ばれました。学芸員の家に配達されたものを、収蔵品として博物館で保管することにしました。

  これは、将来的にコロナウイルス感染症のころの沖縄の世相を振り返る展示に使うためです。このようなモノは大量に出回ったため、かえって大事にされずに短期間で姿を消してしまいがちです。”

 展示にはどのような意図が。担当者に聞きました。

―収蔵した背景を教えてください

「2020年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、市民生活に大きな影響があり、多くの方々がお亡くなりになったり、経済活動や人々の活動も自粛を余儀なくされるなど、悲しい出来事が続いた年でした。その年に政府をはじめ、国民一人ひとりが感染症対策にどのように努めたのか、どのような対策をとったのかを10年、20年、50年後の人々に紹介する資料の一つと考えました」

―他の収蔵品は

「当館では、県内で開催されたイベントの関連グッズや看板など、市民の生活や世相をあらわすような物を収蔵し、展示などに活用しています。特にこのマスクのような消耗品については、あまり保存することもないため、後世まで残らないことが多いと考え、開封しないままのマスクを資料として収蔵しています」

―コロナ関連の展示品は他にもありますか

「展示品はありませんが、資料の収集は継続中です」

―コロナ禍という歴史を振り返る上でどんなものが必要ですか

「コロナ禍によって学校や地域社会、あるいは娯楽も大きく変わりました。写真や動画も含め、本当に様々な分野の資料が必要だと思っています」

   ◇   ◇

コロナ危機への政府の対応は当初後手後手に回り、アベノマスクも不評を買いました。一方で、コロナ禍という歴史を振り返る上では、布マスクは貴重な資料の一つです。ポストコロナの未来人はこの布マスクに何を見るでしょうか。

 【アベノマスク】安倍政権が新型コロナ対策の目玉として行った布製マスクの配布。厚生労働省が介護施設や妊婦向けに約1億5736万枚、全世帯向けに約1億3004万枚、文部科学省が学校用に約3070万枚を調達しました。支払いには計約442億6338万円もの巨額の税金が投じられました。マスクの流通状況や配布方針の変更に伴い、厚労省調達分は2021年3月時点で約8272万枚(約115億1千万円相当)が倉庫で保管され、保管費は昨年8月~今年3月で約6億円に上ります。 

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