困っている人を支えるはずの制度がその人に届かない、さまざまな理由から、助けが必要な人の視野に支援の手が入りにくくなることがある中、神戸市の取り組みが「絶対に目にとまる」「良いアイデア」「全国に広まってほしい」とSNSで注目です。トイレットペーパーにデザインされたメッセージと相談窓口。パートナーや恋人からの暴力に悩む人にどうか届きますように。
「今日ショッピングモールのお手洗いに入ったらトイレットペーパーがこれやったんやけど、すごい名案じゃない?!DV受けてる人が一人になれるところってお手洗いくらいしかなさそうだし、スマホで検索なんかしてたらチェックされてさらにDV受けそうだし。これで救われる人がいますように…」
ツイッターユーザーのohirune_sakk0(@sakk0_zzz)さんが投稿した画像が9万超のいいねを集め、拡散中です。「1人になれるところはトイレしかない人多いから良い取り組み」「表面的な呼びかけとは全く異なる、成果を生み出す仕事だと感じます」「これ学校でもあれば良いな。イジメや性の問題とか」などと共感を呼んでいます。DV被害の経験があるユーザーでしょうか、「私は市役所のトイレのティッシュがきっかけ。モラハラがひどくて毎日しんどくて…でも相談先が分からなかった。ティッシュに入ってた紙の番号に電話して、相談ができてありがたかった。トイレットペーパーに印刷するのすごくいい」とツイートしています。
神戸市家庭支援課によると、このトイレットペーパーは「女性に対する暴力をなくす運動」(11月12~25日)に合わせて啓発コピーと相談先を印刷したもの。2017年度から続ける取り組みで、本年度は5000ロールを製作し、大丸神戸店、ダイエー神戸三宮店、イオンスタイル神戸南店、イオンスタイルumie店の女性用トイレに設置されました。
「ゴメン、殴ったんは、愛情の裏返し。」なんてあり得ない。/彼といるとビクビクする 本当にそれって『愛』なのかな。/いつもメールをチェックされる。そんなのしんどくない?/夫の暴力がこわい 彼の罵声がこわい ビクビクしながら暮らしてます。
紫色で書かれたメッセージはこの4種類。それぞれの後に「神戸市配偶者暴力相談支援センター 女性のためのDV相談室」の電話番号が記されています。1994年にアメリカで発祥した、DVなどの個人間の暴力や虐待の防止と啓発を目的としたパープルリボン運動にちなむもので、紫は「女性に対する暴力を許さない」という思いを表しています。
ohirune_sakk0さんによると、最初に気づいたのは一緒に個室トイレに入ったお子さんだったそう。紫色のプリントという珍しさもあり、すぐに引き出して目を通したそうです。「アイデアと同時に、プリントされているフレーズが、今すぐ助けを求めたい人だけでなく、パートナーにされていることがDVであることにまだ気がついていない人に気づきを促す言葉である点が優れていると思います」と話します。
「期間や場所も限られた取り組みですが、思いがけない反響に驚くとともに、暴力を根絶したいという運動の意をくんでくださり本当にありがたいです」と神戸市の担当者は話します。2020年度、神戸市のDV相談室が対応した件数は2625件。その中には、このトイレットペーパーで相談窓口を知ったというケースが1件ありました。