北京五輪後に「危険な時期」!? 中国の「台湾侵攻」の可能性、元米補佐官ら続々と指摘 その時日本は

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台湾情勢で緊張が高まっている。10月に入り、中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入するケースが増加し、緊張が高まっている。台湾国防部によると10月初めから4日までに、中国軍の戦闘機や爆撃機149機が台湾の設定する防空識別圏に侵入したという。中国軍機は6月にも28機が台湾の防空識別圏に侵入し、台湾が実効支配する東沙諸島周辺などを飛行した。

中国がこういった行動を繰り返す背景には、習政権への警戒を強め、米国を中心に欧米との関係を強化する蔡英文政権を牽制することがある。10月に入り、元フランス国防相が率いる上院議員6人とオーストラリアのアボット元首相が相次いで台湾を訪問し、台湾と連携を深めていくことで一致した。

フランスはニューカレドニアなど南太平洋に海外領土を持っており、中国の南太平洋への進出を強く警戒しており、インド太平洋構想で米国や日本などとの関係を緊密化させようとしている。最近、フランスとオーストラリア、米国、英国との間では、新たな安全保障枠組みAUCUSによって勃発した潜水艦開発問題で関係が冷え込んでいたが、フランスは在豪フランス大使をキャンベラに戻すことを決定するなど、関係を修復させる方へ舵を切っている。潜水艦開発問題でフランスは米国などへ不満を高めたものの、対中国という共通の懸念事項を共有しているので当然の措置と言えるだろう。

中台の緊張は長年の歴史があり、今に始まったことではない。しかし、以前と異なるのは、安全保障の大物実務家や研究者などから具体的な数字で中国への懸念が示されていることだ。

たとえば、トランプ前政権時に国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたマクマスター氏は10月4日、米国シンクタンクでの講演で、中国による台湾侵攻の可能性について言及し、来年2月の北京冬季五輪終了後に危険な時期に入ると述べ、ロシアが2014年のソチ冬季五輪後にクリミア半島の併合に踏み切ったように、中国も北京五輪後に台湾への威嚇をさらにエスカレートさせる恐れがあると言及した。また、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月、今後6年のうちに台湾進攻が起こる可能性があり、この地域における米中の軍事力が接近・逆転し、中国優位の環境が予想より早く到来する恐れがあると指摘した。

さらに、米国のシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」でシニアフェローを務めるToshi Yoshihara氏は去年5月、発表した論文「Dragon Against the Sun: Chinese Views of Japanese Seapower」の中で、中国は海軍力において優越感を高めればより攻撃的な戦略を打ち出すと指摘し、中国が4日以内に尖閣諸島を奪取する強行シナリオを具体的に記した。そのシナリオは8つのフェーズで構成され、那覇空港を中国が巡航ミサイルで攻撃したり、宮古海峡の西側で日中による短期的かつ致命的な軍事衝突が勃発したりするシナリオが描かれている。尖閣諸島は日中の領有権問題であるが、台湾と距離的に非常に近く、仮に台湾有事で米軍が関与することになれば、それは沖縄が必然的に台湾有事に巻き込まれることを意味する(在沖米軍が関与する事になる)。台湾有事と尖閣、沖縄は切っても切れない問題と言って良い。

マクマスター氏、デービッドソン司令官、Toshi Yoshihara氏の3人はそれぞれ、北京五輪後、6年以内、4日以内と発言したが、短期間のうちにこれほど多くの具体的数字が示された過去はない。

中国はウイグルやチベットだけでなく、香港への締め付けを強化し、今日の香港は昔のような香港ではなくなっている。完全に中国化が進んでおり、習政権のイメージの中では次は台湾だろう。結局、香港の問題で欧米からの圧力に勝ったことによって、習政権も対台湾で政治的な勢いを持ったことは間違いない。繰り返しになるが、台湾有事で米軍が加わるとなれば、その出発地は沖縄となり、台湾有事は日本有事と直結する問題だ。全面的な戦争の可能性は低いにしても、我々日本はこういった具体的な数字を決して軽視してはならない状況といえる。

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