競走馬として生を受ける馬は年間約7000頭。うち寿命を全うできるのはわずか1%です。家柄に恵まれた人をエリートの意味合いで「サラブレッド」と呼ぶことがありますが、現実のサラブレッドはたとえ血統が優れていても、レースで好成績が出せなければ、食肉にされるなど厳しい運命が待ち受けています。
馬たちを愛するオーナーが、終の棲家として愛馬を送る牧場があります。栃木県那須塩原市にある「ブレーヴステイブル」。馬11頭、猫30匹、犬1匹を預かり、余生を見守っています。
引退した競走馬や保護猫を預かるために開場
代表の八重樫美織さんが2010年12月、引退した競走馬や乗用馬のほか、飼育放棄や虐待され、保護された猫や犬を預かるために開場しました。八重樫さんに話を聞きました。
ーー馬が命を全うする場所だそうですね。
「馬たちが余生を送る場所です。競走馬や乗用馬として役割を終えても、『最期まで見守ってあげたい』というオーナーさんや競馬ファンたちから預託金などを得て、運営しています」
「馬は亡くなった場合、死体が産業廃棄物として扱われるため、解体業者に引き取られるケースがほとんどです。生涯を終えた馬たちを愛を持って埋葬したいと思い、樹木葬で埋葬するお墓も作りました。オーナーさんも同じ場所に埋葬することができます。馬の場合、大きいので、一番大きな区画(2.2m×3m)で、50万円(税抜き)で、土葬になります。(さらに遺骨を埋葬する)追骨は8万円(税抜き)です。ブレーヴステイブルで預かっていない馬の埋葬もできます」
ーー馬以外のペットの場合、火葬も引き受けているんですか?
「犬、猫、ウサギ、小鳥など小動物の火葬も受け付けています。小鳥サイズが12500円からで、30キロ未満の場合は33000円からです。馬以外のペットの樹木葬も受け付けています」
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過酷な現役生活を終えた馬たちが草原で穏やかに余生を生きる。理想の一つですが、高い壁もあります。速く走ることを極めたサラブレッドは実は体が弱く、神経質という特性があります。「高齢でもあり、見知らぬ人が大勢集まるとストレスで体調を崩すことも。だから集客イベントなどもしにくいんです」と八重樫さん。病気やケガをしたときの医療費はかなり高額で、現在、趣旨に賛同したオーナーや競馬ファンら約200人が「余生の会」の会員(1口3千円)として登録し、運営を支えていますが、経営は「正直、厳しい」と打ち明けます。
人間によって生を受けた競走馬の終末に人はどうかかわるべきか。馬たちの優し気なまなざしはそれを問いかけているのかもしれません。
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ブレーヴステイブル(栃木県那須塩原市塩野崎360 連絡先080-5035-8402)
馬の預託料は月11万円(削蹄・消費税込み)。入厩料は20万円。犬は預託料が月5万円、入厩料5万円。猫は預託料月3万円、入厩料3万円。「余生の会」の会員も募集中です。
ホームページはこちら→http://bravestable.com/