猫の保護活動…笑って知って!「猫のための落語会」開催 「弱い立場にある動物も人も、生きやすい世の中に」

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

猫のための落語会『にゃらまち猫噺』が、10月16日落語喫茶・古々粋亭(奈良市小西9)で開催されます。収益の一部は、地域の保護猫活動に使われるとのこと。出演は上方落語界で一番の愛猫家の月亭遊方師匠と多くの保護猫と暮らす笑福亭右喬師匠、可愛い保護猫と暮らす桂佐ん吉師匠、月亭天使さんの4人。全員猫がテーマの落語を披露し、猫に関するトークコーナーもあるのだそう。

とても珍しい「猫のための落語会」は、どのような経緯で開催することになったのでしょうか?主催者の古々粋亭席亭・井上雅博さんと恭子さん夫妻と、奈良市で保護猫活動を行う「ふわり」さんの思いをうかがってきました。

楽しく広く野良猫の保護活動を知ってもらいたい

 

――猫のための落語会『にゃらまち猫噺』は、なぜ開催しようと思われたのでしょうか?

井上恭子さん:「ふわり」さんは元々うちのお店のお客さんで、親しくなるにつれ、野良猫のために自腹で活動をしていると知ったんです。話をするうちに、野良猫が置かれている環境を知るようになります。それで私たちで何かお役に立てられないかと。

――ただ寄付をするだけでなく、落語会が良いと思われたのは?

恭子さん:野良猫の問題を広く知っていただければと考えました。それも楽しく。うちは落語喫茶ですので、落語会を開催すれば、もっと興味を持ってくださる方が増えるでしょう。ご縁があって愛猫家の月亭遊方師匠と知り合え、落語会の提案をすると快く引き受けていただけました。

――広く知ってもらわなければならないと思われたきっかけは?

恭子さん:私は猫が好きですが、「ふわり」さんと知り合うまで保護猫活動なんて全く知らなかったんです。だから、まず知ってもらうことが大切だと考えています。

井上雅博さん:つらいばかりで伝えてしまったら敬遠する人が出てきます。不謹慎な言い方かもしれませんが、取っ掛かりとして知ってもらえればと思います。それからご自身で調べるようになってもらえたら嬉しいです。将来的には、保護猫をサポートするネットワークが作れたら良いなぁ。

まず地域の方に野良猫の現状を知ってもらいたい

奈良市で野良猫の保護活動を行っている「ふわり」さん。活動地域では、この6年間で100頭を超える外で暮らす猫たちの不妊手術を実施しました。

それでも、まだ手術を受けていない猫が出現します。不妊手術をしていないオス猫は、繁殖時期になるとメスを求めて移動することが多いからです。また、オスがメスを連れて移動することもあります。そのため、全頭手術を終えたと思った地域でも継続的な見回り、見守りが必須となります。

保護をした野良猫のデータを取り、地域の方へ公表も行っています。どんな猫でどんな病気を患っていたかといったデータを地域の方に伝えることが、SNSで不特定多数に発信することよりも大切だと考えておられます。

精力的に活動をされている「ふわり」さんですが、詳しい活動地域の公表は控えてほしいとのこと。それは保護活動をしていると公表していると分かった途端、猫を捨てにくる人がいるからなのだそう。それもあり、代表者の本名を公表されることも控えてほしいと。

地道に地域に根差した保護活動をされておられる「ふわり」さんが、今伝えたいことは何でしょうか?

猫好きが猫好きを追い詰める現状

――「ふわり」さんが保護猫活動を始められたきっかけは何でしょうか?

ふわりさん:私は子供のころから家に猫がいて、猫がそばにいることが当たり前の環境でした。自然と猫が好きになり、例えば旅行好きの人が旅行にお金を使うように、私は猫が好きなので猫にお金を使っています。

――野良猫の保護活動でお金がかかるのは、何でしょうか?

ふわりさん:医療費です。ただ、不妊手術自体は個人で保護活動していても、動物病院との協議で一定の金額で実施していただくことが可能です。そのため、予算を組みやすいです。しかし、不妊手術以外の治療費や手術費、入院費については高額になりがちです。飼い猫と違って感染症にかかる割合が高く、事故にもあいやすい。その上、病院に連れて行ける段階には重症化、重態化していることが多いからです。

――野良猫がいる地域の方が医療につなげるのは難しいのでしょうか?

ふわりさん:野良猫をそもそも病院につれていく、というところでハードルがあります。治療費がいくらかかるかが不透明で、二の足を踏んでしまいます。加えて、標準治療が猫にはないため、自分が払っている医療費が妥当なのかも判断しづらい。だから、救護時点で決断しにくい人が多いように見受けられます。

――何百万もかけられないから、「助けて」と言えない?

ふわりさん:費用の問題はかなり重要なウェイトを占めますが、問題はそれだけではありません。「最後まで面倒を見られないのは無責任」と誰かを責めたてることも、悲しい結果へ導いてしまう遠因になります。猫も人間も生き物ですから、思わぬことが起きて当然です。弱い立場になった人を責め立てると、その人を孤立させかねません。そうなると、猫も人間も助けられません。

猫以外の立場の弱い人も生きられる可能性を

 

――野良猫の保護活動は、その野良猫を取り巻く人達の見守りも大切になってくるのですね。

ふわりさん:不妊手術をせず、外にいる猫にフードを撒いて回っている方々がおられます。この人たちがなぜそのようなことをするのかという問題にも、目を向ける必要があると考えています。問題を解決しないまま給餌を続けると、どんどん猫は繁殖し続け、いずれ手に負えない事態に陥りるでしょう。

――目標は殺処分ゼロですか?

ふわりさん:「目標は殺処分ゼロ」というフレーズは見聞しますが、実のところ私は、そういう目標を掲げて活動しているわけではありません。現代はさまざまな場面で、弱い立場だと生きにくい世の中。私もどちらかというと弱い立場にある人間です。それぞれが助け合って、少しでも生きやすい世の中になるよう願って行動しているだけです。

――野良猫の保護活動がしたい方が、最初にすべきことはなんでしょうか?

ふわりさん:身近に外で暮らさざるを得ない猫はいるはずです。その存在にまず目を向けてください。恐らく、どのような地域でも外にいる猫たちをなんとかしようと活動している方々がおられます。その活動をサポートすることが、最初にできる保護猫活動だと思います。ひとりひとりが地域で行動できれば問題は拡がらず、その地域での解決が可能になっていくからです。

――10月16日の『にゃらまち猫噺』に向けて、メッセージをお願いします。

ふわりさん:『にゃらまち猫噺』では、猫好きの落語家さんたちが猫にちなんだ落語をされる珍しい機会とのこと。とても楽しみです。配信もあり、遠方で来られない方にも配慮されていて新しい試みだなと思いました。この機会に、私が活動資金のために作製したオリジナルグッズの販売もさせていただくことになっています。お手にとっていただけると嬉しいです。

【にゃらまち猫噺】

会場:落語喫茶・古々粋亭(奈良市小西9)
日時:令和3年10月16日(土)14時開演、13時半開場
出演:月亭遊方、笑福亭右喬、桂佐ん吉、月亭天使
料金:2990(にくきゅう)円(前売り・当日共通)、配信2000円
お問い合わせ:0742-94-7707(古々粋亭)

▽配信URL
https://nyaramati1016.peatix.com/

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