中国が「嫌なこと」を着々と…対テロ戦争の終焉でバイデン政権の「対中路線」が活発化

治安 太郎 治安 太郎

 アフガニスタンからの米軍完全撤退により、バイデン政権は対中強硬路線に本腰を入れ始めている。バイデン政権は9月15日、英国とオーストラリアと新たな安全保障の枠組みである「AUKUS」の発足を発表した。今後は米国と英国が協力する形でオーストラリア海軍へ原子力潜水艦の導入が進められる。

 また、9月24日にはバイデン大統領が主催する形で、ワシントンにおいて、米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国によるクアッド首脳会議が初めて対面形式で開催される。クワッド首脳会議は今年3月にもオンライン形式で、昨年10月には東京で外相レベルの会議が開催されたように、対中国を意識した米国による多国間協力はその存在力を急速に高めている。では、なぜ今日になってその多国間協力の存在感が目立つようになったのか。それにはいくつかの理由がある。

 まずは、そもそもだが、バイデン政権の対中戦略にある。一国で中国に対抗してきたトランプ前政権と違い、バイデン政権は友好国や同盟国と連携して中国に対抗する戦略を重視する。その姿勢は上述したようなクアッドやAUKUSに見られるように、バイデン政権には日本やオーストラリア、インド、そして英国やフランスなど欧州との連携を重視して中国に対抗してきたい狙いがある。

 また、内向き化する米国、もう米国は世界の警察官ではないという現実主義的な考えがある。周知のとおり、経済力や軍事力で米中は年々拮抗してきており、東アジアや西太平洋での軍事的優位は中国に傾きつつあるだけでなく、ホワイトハウスや米国民の外国への関心が低下している。確かに、バイデン大統領によるアフガン駐留米軍撤退のタイミングで批判は多かったが、アフガニスタンからの撤退を求める声はそれ以前から根強かった。「国内の経済状況が落ち着かないのに、なぜ米国が外国でお金を使うのか、米兵が死なないといけないのか」という想いがあるのだ。

 バイデン政権の根底にも、「軍事力で中国を抑止することは現実的に難しいが、かといって米国がはるか太平洋の反対側に関与するにも限界がある、だったら他の国々にも役割と任務を求めればいい」という考えがある。

 一方、バイデン政権は、習政権が多国間中国牽制網を嫌っていることを十分理解している。トランプ時代には米中貿易戦争が繰り広げられたが、米国と欧州との間で亀裂が深まったこともあり、習政権は第3諸国との関係をそれほど気にする必要がなかった。しかし、バイデン政権になってはそうはいかず、常に多国間中国牽制網をどう切り崩すかを考える必要性に迫られている。経済関係もあり、習政権も日本やオーストラリア、インド、欧州との関係が悪化することはできれば避けたいのが本音だ。

 バイデン政権が依然としてTPP復帰に難色を示すなか、昨今、習政権がそのTPPへ参加申請したこともそれを物語っている。バイデン政権は中国のそういった懸念を理解しているので、クアッドやAUKUSなど多国間協力を積極的に押し進めているのである。

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