お米からできたブックカバー なんと「お米由来のプラスチック」を使ったアイデア製品です

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 お米からブックカバーができる-。そんな話を耳にしました。でも、どうやって作るのでしょう。え、お米由来のプラスチックを利用する?ますますよく分かりません。製造元の企業に詳しく聞きました。

 今夏、大阪市で見本市「高機能素材week(ウイーク)」が開かれました。会場内のブースの一画に「お米でできたブックカバー」が展示されていました。

 開発したのは、京都市北区の会社「コバオリ」。コバオリは、「ケアネーム」という衣服の洗濯方法や素材を記したタグの製作をはじめ、衣料品向けの透明な包装資材などを製造する企業です。近年、環境への配慮が必要となる中で、コバオリは、自社の包装資材の主原料にブラジル産サトウキビ由来のバイオマスプラスチックでできたフィルムパッケージを使用してきました。

 しかし、サトウキビ由来のバイオマスプラスチックは、欠点があるといいます。外国産のため、為替の変動や新型コロナウイルスの感染拡大、政情不安などによって価格が影響を受けやすいそうです。

 そこで、コバオリは、国内で生産できるバイオマス製品として、お米由来のバイオマスプラスチックに着目しました。お米には、市場に流通しにくい古米や、食用に適さない破砕米などがあります。古米や破砕米の中でも、利用されないお米があり、従来は多くが廃棄されてきたといいます。

 こうした非食用米と石油を混ぜたバイオマスプラスチックを開発するバイオマスレジンホールディングス(東京都)と、コバオリは提携することにしました。製品はすでにレジ袋やおもちゃなどに利用され始めています。

 ただ、お米由来のバイオマスプラスチックには独特の難点があります。黄色っぽくなるほか、少し湿ったような手触りになります。そのため、コバオリは、透明さが要求される衣料品の包装資材には、まだお米のバイオマスプラスチックを使用していません。

 「包む」「包装する」資材を製造する会社コバオリとして、この色味や手触りを何かに生かせないかと考えた社員がいました。開発担当の中野恵さん(43)です。思いついた用途はブックカバーでした。

 確かに、装丁をはずした文庫本は、黄色みがかったお米由来のバイオマスプラスチックのカバーがよく似合います。大阪の見本市では「お米からできたブックカバー」は来場者に好評を博したといいます。コバオリは、今年12月に千葉市で開かれる見本市にも出品し、反応が良ければ商品化へとこぎ出したい考えです。

 コバオリの小林慎吾社長は「非食用米を使用するので耕作放棄地の活用や地域活性化、農業支援にもなる。プラスチック製品の完全なリサイクルシステムを確立するには、まだかなりの時間を要する。お米由来のバイオマスプラスチックは過渡期の技術だが、その時間のすきまを埋める製品になるはず」と期待を込めます。

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