岡山県総社市にある「ボルダリングルームねこのて」は、年代や性別を問わず、初心者から上級者までボルダリングが楽しめる施設。代表の為本元さん(49)、由紀子さん(49)夫婦が営んでいる。1階がボルダリングルーム、2階は自宅になっており、飼い猫の「もも」(メス、1歳)と、「みかん」(メス、1歳)は自宅で暮らしている。2匹はボルダリングルームに立ち入ることはなく、お客さんが会えるのは稀だが、「広報担当」として、インスタやポスターをはじめ、課題達成時にもらえるオリジナル缶バッジの写真など、店のマスコットキャラクターとして活躍中だ。元さんと由紀子さんに2匹との出会いや客招きぶりを聞いた。
由紀子さん 昨年6月末、娘が就職して家を出て、夫と私だけになり、心にぽっかりと穴があいてしまったんです。その少し前から「猫を飼いたいね」と夫と話していて、何度か保護猫の譲渡会へ足を運んでいたんですが、なかなかピンとくる子がいなくて…。ももと出会ったのはそんな時でした。
由紀子さん 昨年7月初旬のこと。お客さんの女性が、「職場のガソリンスタンドに迷い込んだ子猫を保護した」と、ももを見せてくれたんです。生後2ヶ月くらい。雨でずぶ濡れになり、カラスに突かれたのか、脚や口をケガしていましたが、ももの顔を初めて見たとき、あまりに可愛くて、あっ、この子だと。一目惚れでした。
元さん ももが我が家にやって来て3ヶ月後、今度はみかんがやってきました。妻とは「1匹より2匹がいいね」と話していたんです。みかんは、別のお客さんの知人が保護しました。ゴミ集積所で、箱に3匹の兄妹が入れられて捨てられていたそうです。先住猫のももと相性がよければ、とのことで、3匹のうち一番おとなしそうな女の子を選んでトライアルさせてもらいました。2匹を引き合わせてみると、ももは最初こそフーッといったものの、2日くらいですぐ仲良しに。今はももにみかんがいつもくっついて行動しています。まるで本物の姉妹のようです。
由紀子さん 性格は、ももは甘えんぼう、みかんは岡山弁で「おんびんたれ」(臆病者の意味)ですね(笑)。私たちとしては、いずれはももだけでもいいので、ボルダリングルームの受付でお客さんの出迎えや見送りをする看板猫になってほしいと願っているんですけど、今のところ2匹とも人見知りするのと、壁の下は危険でもあるため、お客さんがいるときはボルダリングルームへは立ち入りません。
元さん ただ、「猫ちゃんに会いたい」というお客さんも少なくないので、週末忙しくないときなどに、どちらかを抱っこして自宅からルームへ連れてきて、お客さんと触れ合える時間をつくっています。私か妻が抱っこをしていればじっとしているので。今のところ2匹に会えるのはレアですが、お客さんの間ではアイドル的存在なんですよ。
元さん ボルダリングルームは、初心者から上級者まで、グレードに応じて楽しめるつくりになっています。店名の「ねこのて」は、ボルダリングを楽しんだり運動不足を解消したりするのを「猫の手のようにお手伝いしたい」との思いを込めてつけました。もももみかんも、ボルダリングなんてできませんが、店のマスコットキャラクターとして活躍してもらっています。
由紀子さん 毎日、店のインスタに、私か夫が自宅で撮った猫たちの写真をアップするのが日課なんです。いかに可愛い写真を撮るか、毎日、夫と競い合ってるんですよ(笑)。お客さんの中には、猫の写真を見たのがきっかけで店に来られ、ボルダリングの面白さにはまったという方もおられます。
元さん 2週間に7つの課題を出して、全部、もしくは半分以上クリアできたら、ももかみかんのオリジナル缶バッジを差し上げています。バッジは私と妻が撮影した2匹の写真を使い、2週間ごとに写真が入れ替わって新しくなるので、バッジを集めるのをモチベーションにされている方も多いです。中には、滑り止めの粉を入れるチョークバックに、これまで獲得したバッジをたくさん付けている方もおられます。バッジは頑張った証。「猫ちゃんたちが応援してくれているようで楽しい」とおっしゃってくれる方もいて、2匹はしっかりと客招きをしてくれています。
由紀子さん 夫には夢があるんです。それは、ボルダリングの2号店を出すこと。ここは自宅兼なので、壁の高さや広さにも限界があるのですが、「いつになるかはわからないけれど、壁をもっと広げ、のびのびと楽しめる2号店をいずれ持ちたいね」と話しています。ももとみかんは、なかなか会えないアイドルですけど、これからもマスコットとしてお客さんたちを励まし、元気づけてほしいです。
【店名】「ボルダリングルーム ねこのて」
【住所】岡山県総社市地頭片山32-10
【電話】0866-90-2225
【インスタグラム】@boulderingroom_nekonote