2022.07.31(Sun)

「遊んで」とすりすり　車の修理に来店したお客さんに甘えるネコさん一家　「事故でへこんだけど癒されたよ」と笑顔に

うちの福招きねこ〜西日本編〜

　滋賀県東近江市にある「有限会社　川西鈑金工業」は、自動車のボディにできたキズやへこみなどの鈑金塗装修理を行っている家族経営の会社。事務所内では、代表取締役・川西雄一朗さん（４５）一家の飼い猫「ラム」（オス、推定７歳）、「ミスト」（メス、２歳）、福丸（オス、１歳）、「オセロ」（オス、１歳）の４匹がお客さんを出迎えている。ラムとミストは夫婦。福丸とオセロはその子どもたちだ。ともに不運な境遇だったラムとミストから生まれた福丸の額には、成長するにつれて「八」の字模様が現れた。「猫たちの接客のおかげでお客さんの笑顔が増えた」という雄一朗さんに、ラム＆ミスト夫婦との出会いや、福丸やオセロの接客ぶりなどについて話を聞いた。

　父猫のラムは２０１８年７月ころ、「ペットショップで売れ残ったスコティッシュフォールドがいて、里親を探している」と親戚を通じて連絡があったのが出会いのきっかけでした。

　その少し前に、当時飼っていたスコティッシュの子が心臓病を発症して短命で死んでしまい、家族で大泣きしていたんです。その直後だったため、同じスコティッシュだし、これも何かの縁、と譲り受けました。

　引き取ったとき、ラムは推定３歳くらい。劣悪な環境で飼育されていたのか、体はガリガリで栄養失調なのは明らかでした。風邪もひいていて、鼻が出たり下痢をしたりといった状態が１年以上続きましたが、投薬をしながら粘り強く治療を続けたところ、次第に回復し、元気を取り戻しました。

　一方、母猫のミストはその２年後の２０２０年６月２０日、コロナ禍初の緊急事態宣言が解除された後、自宅近くで衰弱して死にかけていたところを保護しました。まだ幼い子猫でした。その日は天赦日に一粒万倍日が重なった、年に２回しかない大開運日だったんですよ。すぐ病院で治療し、事務所に連れてきたところ、ラムが親しげにミストに近づいていき、２匹はすぐに仲良くなったんです。

　１年ほどが経ったころ、ミストが妊娠していることがわかり、２０２１年７月、ミストは４匹の赤ちゃんを産みました。それが福丸、オセロ、ダヤン、ミッキーです。コロナ禍で気分が落ち込んでいたときだったので、両親や弟、妻や２人の娘たちも家族はみんな大喜び。特に猫好きの母は「赤ちゃんから猫を育てられるなんて幸せ」と嬉しそうでした。

　ラムはミストにも優しいし、生まれてきた赤ちゃんたちに対しても、すごく大事に面倒をみてくれました。当初は赤ちゃんたちの里親探しも考えましたが、ミストが頑張って産んでくれたことで、家族みんなが励まされるような気持ちになれたので、家族で話し合って「４匹ともうちで育てようよ」と。それで福丸とオセロは事務所内でラム、ミストと一緒に、ダヤンとミッキーは近所の僕の自宅で飼うことにしました。営業時間が終わるとラム、ミスト、福丸、オセロは事務所２階にある実家で過ごしています。

　生まれたころ、福丸の額の模様はふわっとした黒い楕円が２つあるだけだったんです。生後２ヶ月が過ぎたころから、はっきりと「八」の字に見えてきたんですよね。「末広がりで縁起がいいね」「開運日に保護したミストから生まれた子だから、こんな縁起のいい模様になったのかな」などと家族の間では話しています。

福丸は人なつこく甘え上手、オセロはおっとりした性格

　福丸は人なつこく甘え上手、耳が垂れたオセロはおっとりした性格です。福丸やオセロは生後４ヶ月で事務所デビューを果たし、会社は猫たちで賑やかになりました。

　うちは車の板金塗装修理がメインなんです。お客さんは、事故（自損を含む）で大切にしている自分の車のボディが傷ついたりへこんだりして、修理のためにやってくる方がほとんど。そのため、たいてい気分もへこんでいる方が多いのですが、特に福丸はそんなお客さんの元へ「遊んで」とすり寄っていき、猫じゃらしで遊んでもらうのが好きなので、「暗い気分やったけど、猫たちに癒されて元気でたわ」と、笑顔で帰っていかれる方が増えました。ちなみに猫たちがいるのは事務所内のみ。工場に入ってくることはないので、お客さんの車に猫たちが近づくことはありません。

　今年３月には事務所内にハンドメイド雑貨屋を併設しました。こちらは主に妻（真弓さん）がやっています。猫たちがお客さんをもてなしてくれるおかげで、鈑金塗装修理だけでなく、猫好きのお客さんやご家族が、何もなくても気軽に立ち寄ってくれるようになりました。中には車の修理が必要な人を紹介してくれることも。本当に猫たちには感謝です。

　僕たち家族にとって、今では猫たちのいない生活は考えられないです。コロナ禍で会社の売上は正直、かなり落ち込んでいますが、それでも日々頑張れるのは、猫たちが家族みんなの心の拠り所になってくれているから。それぞれ性格は違うものの、そばにいてくれるだけで幸せを感じます。僕たちが猫たちを飼っているというより、猫たちが僕たちと一緒に生活してくれている、といった方がフィットします（笑）。

　最近、福丸は事務所奥の上にある神棚でくつろぐことが多くなりました。「あれ、福ちゃんがいないな」と思ったら、神棚の上や中で寝ているんですよ。神棚が好きな猫なんて珍しいですよね。「バチが当たるかもしれんから近づいたらあかんよ」と何度注意しても行くのでちょっと困っています。もしかしたら福丸は、幸運を招いてくれる福の神なのかも！？