今年3月23日、北海道旭川市内に住む当時中学2年生だった廣瀬爽彩(さあや)さんが同市内の公園で凍死した姿で発見され、2年以上前からせい惨なイジメに合っていたことが判明。8月には遺族の代理人が会見して遺族の手記を公開したことで全国的に注目されたが、第三者委員会は同月末時点で当時の生徒や管理職を含む教諭に対して聞き取り調査をしていないことが会見で明らかになり、その後の進捗状況の発表もない。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は10年前に発覚した滋賀県大津市のイジメ事件での対応と比較する意味で、当時の大津市長として対応に当たった弁護士の越直美さんを取材し、27日、当サイトに「第三者委の在り方」を報告した。
2011年10月、滋賀県大津市で当時中学2年生の男子生徒が自宅マンションから投身自殺し、その背景に複数の同級生から犯罪行為ともいえるイジメを受けていたこと、学校や教育委員会の隠蔽体質が社会問題化し、この事件が契機となって翌年には国会で「いじめ防止対策推進法」が可決された。「大津いじめ訴訟」は今年1月、加害者側の元同級生に対する400万円の賠償命令が確定している。
越さんは、12年1月に女性として史上最年少(当時)の36歳6か月で大津市長に就任。2期8年を務めた。就任前年の11月に「調査終了」となった問題に対し、市長として改めてその問題の背景を検証し直し、真相究明への道筋を作ったと評価されている。小川氏は「大津の事件は旭川の状況に似ている。大津に見習うことがあるはず」との観点から越さんに直接取材し、その内容を自身のYouTubeチャンネル「小川泰平の事件考察室」で2回に分けて伝えた。
小川氏は「旭川では第三者委員会の在り方が問われています。11人のメンバーは全員が北海道の人で、10人が地元の旭川、1人が札幌。市教委から講演を依頼されるような人もおり、ご遺族から『違和感』を示されています。それに対し、越さんが市長だった大津市の第三者委のメンバーは6人で、うち、ご遺族の推薦が3人、日本弁護士連合会と日本生徒指導学会等からの推薦が3人。さらに、弁護士3人を含む調査員4人がサポートする構成で、滋賀県の人はゼロでした。京都、大阪、兵庫、和歌山の近畿圏だけでなく、東京からは教育評論家の『尾木ママ』こと尾木直樹先生が加わり、土日には聞き取りや深夜に至る調査会議を頻繁に続け、5カ月間で230ページの調査報告書を提出するまでの調査を完了させている」と説明。「それに比べると、旭川は何もやっていない」と苦言を呈した。
小川氏は「越さんに今回の旭川の事件について聞いたところ、『信じられない』の第一声から、『学校や教育委員会は変わらないんですね』と即答された。当時の大津では、再調査を市教委ではなく、越市長の下で行い、外部の専門家に調査してもらった。越市長は涙の会見をしたことで注目されたが、滋賀県警も強制捜査に乗り出し、中学の校長室、職員室、市教委の学校教育課などを『ガサ入れ』して段ボール11箱分の資料を押収しています。越さんは市長時代に『できることは何でもやる』『警察との連携』を進めた」と振り返った。小川氏は「それに比べ、旭川はなんでこんなに差があるのか。なあなあでやっている。何、眠たいことを言っているんだと思わざるを得ない」と嘆いた。
越さんについて、小川氏は「市長として『何があったか本当のことを知りたい』『2度と同じことが起こってはいけない』という思いを持ち、今は弁護士さんとして活動されている。10年前のことも克明に覚えている記憶力のすごさ、熱心さには胸が熱くなり、頭が下がる思いだった」と語る。
その上で、同氏は「大津という前例を大いに参考にして、旭川の第三者委員会もすべて北海道以外の人で、ご遺族の意向をくんだ方を入れて聞き取り調査を進め、行政も警察との連携も強めてスピードアップをはかるべき」と訴え、「26日の旭川市長選挙で(市長直属の『いじめ110番』設置などを公約とした)今津寛介氏が初当選しました。新市長には期待しかありません」とエールを送った。