ご存知ですか…パルスオキシメーター、実は「日本発」の医療機器 メーカーに聞いた「購入時に気をつけたいこと」

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新型コロナ感染症の流行で、脚光を浴びている医療機器「パルスオキシメーター」。血液中の酸素の量である「酸素飽和度(SpO2)」を測れることから、医療現場では患者さんの呼吸状態などを把握するのに必要不可欠な機器でしたが、コロナ感染症の重症度の指標となる数値を調べられることから、ニーズが激増しています。メーカーのひとつ・コニカミノルタによると、今年6月時点で前年の20倍もの販売台数となっているといいます。実はその原理を開発したのが日本人だったことをご存知でしょうか。「指先での測定」ができる機器を商品化したのも日本のメーカーで、まさに「日本発」の医療機器なのです。

体に当てた光から酸素飽和度(SpO2)を測定

パルスオキシメーターとは、洗濯ばさみのようなもの(プローブ)を指にはさみ、皮膚を通して酸素飽和度(SpO2)と脈拍を測定する機器です。

肺から取り込まれた酸素は、血液中の赤色球に含まれるヘモグロビンと結びついて全身へ運ばれます。酸素飽和度(SpO2)とは、酸素を全身に運ぶ働きがあるヘモグロビンの何%に酸素が結びついているか測ったもの。この数値により、どの程度体に酸素があるかわかるようになります。

パルスオキシメーターのプローブには、赤色の光と、そうでない光を発行するLEDと、光の具合を見るセンサーが付いています。ヘモグロビンは酸素と結びつくと、赤色光をよく吸収し、酸素とはなれると赤外光をよく吸収するという特性があります。色によって光の吸収のしやすさが異なることを利用して、体に当てた光から、動脈血の赤色の度合い分析し、酸素飽和度(SpO2)を測っているのです。

「指先測定」の原理発見には宇宙とつながりが?

パルスオキシメーターの原理が発見されたのは、1972年のこと。医療機器メーカー・日本光電の技術者だった青柳卓夫氏が、他の機器の改良中に「心臓の拍動」を利用することで、動脈血の酸素飽和度を測定できることを発見します。1974年に「光学式血液測定装置」として特許を出願。同時期に独自に開発をすすめていたミノルタカメラ(現コニカミノルタ)も、1カ月ほどのちに「オキシメーター」として特許出願を行います。その後ミノルタカメラは、1977年に世界初の「指先測定型」のパルスオキシメーターを商品化します。

画期的な商品が生まれた経緯には、どうやら宇宙が関係しているようです。カメラ販売で海外市場があったミノルタカメラは、露出計技術もすすんでおり、人類初の月への宇宙飛行計画「アポロ計画」で使われる宇宙仕様の露出計「スペースメータ」も生産していました。指先型パルスオキシメーターは、その宇宙仕様の露出計を開発したチームが、新規分野での活躍を模索する中で誕生したといいます。指先に光を当てたら、脈波が見えたことから「これは血中の酸素飽和度を測れるのでは?」と原理の発見に至ったというわけです。

ミノルタカメラはこの技術をアメリカに持ち込み、臨床の現場に普及していきました。当時、アメリカの医療事故の多くが、酸素不足であることが明らかとなっており、その対策としてパルスオキシメーターが広まったのではないかと言われています。アメリカでの機器改良、発展を受けて、日本には逆輸入されるようなかたちで普及したそうです。

メーカーの視線は「測定」の先に…医療現場の負担を減らしたい

パルスオキシメーターの現状について、コニカミノルタの担当者に聞きました。

――医療業界では当たり前の存在である「パルスオキシメーター」ですが、一般の方々はコロナ禍を受けて初めて知った方も多いかもしれませんね。

コニカミノルタでは、パルスオキシメーターの販売は医療施設のみに行っていますが、コロナ前にはまったくなかった「一般の方からのお問い合わせ」をいただくようになりました。

コロナ禍の影響で、パルスオキシメーターの販売台数は2020年でも前年比3倍ほどになっていたのですが、2021年は6月時点で前年比20倍となりました。この時点で20倍となると製造が追いつかず、以前生産を委託していた会社などに生産再開をお願いするなどして、何とか対応できています。

――パルスオキシメーターに加えて、コロナ禍で注目を集めている医療機器やシステムはありますか。

コロナの感染拡大にあわせて、バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、酸素飽和度など)のモニタリングを行う「VS1」という新しいシステムを発売しました。患者さんの状態を遠隔で監視できるほか、専用の体温計やパルスオキシメーターなどを使うと、患者さんのベットサイドの子機にタッチするだけで、測定結果の記録ができるというものです。

もともと医療現場の業務改善を目指して開発中でしたが、昨今の状況をふまえ酸素飽和度のモニタリング機能を強化して販売しました。

コロナ感染症患者さんをみている現場では、ゾーニングといい感染区域とそうではない区域がわかれています。患者さんの状態を遠隔でモニタリングすることで、感染区域に入る人員を最小限に減らせるほか、バイタルデータの記録作業を簡便にすることで、感染区域内での看護業務の負担を減らせます。

実際の現場では、体の状態を観察しても、感染区域内では記録ができず、外のスタッフへ状態を書いた紙を中から見せて記録をしていたケースもありました。記録などの業務負担を軽くしたり、感染区域の入室回数を減らしたりすることで、医療スタッフの院内感染のリスクを減らすだけでなく、医療崩壊のリスクも低減できるのではと思っています。

――コロナ患者をみている医療現場が、いかに大変かを理解されている、企業さんならではの対応ですね。今後はパルスオキシメーターはどのように変化していくと思われますか。

いずれパルスオキシメーターが医療現場だけでなく、普通の家庭にも当たり前の世の中になり、「肺炎などの早期発見」にも役立つようになってくれればと思います。

メーカーさんが教えてくれた「パルスオキシメーターの選び方」

今ではたくさんの会社から発売されているパルスオキシメーターですが、値段も安いものから高いものまでいろいろで、どんなものを買っていいか悩むところ。そこで、購入時どのようなところに気を付けるといいか聞いてみました。

パルスオキシメーターは医療機器のため、薬機法に定められた認証番号があり、商品の箱に必ず張られているとのこと。「購入する際は認証番号があるか確認してください。そして、医療機器なので、数値の判断は必ず専門の方にしてもらうようにしてください」と教えていただきました。このごろは認証番号をコピーして張っているような粗悪な商品も出てきているらしく、購入する際は気を付けたいですね。

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