二百十日(2021年は8月31日)を過ぎ、台風の季節を迎えた。昔から、暴風被害が大きい「風台風」と、豪雨をもたらす「雨台風」があると言われるが、本当に違いがあるのだろうか。
気象庁は「雨」「風」の区分を決めていない
気象庁は、「風台風」「雨台風」という区分を定めていない。しかし、京都や滋賀に接近した過去の台風には、確かに風が強いケースと雨が激しいケースがある。京都地方気象台によると「台風の進路の左右どちら側に入るかで、風雨の強さが変わる傾向がある」という。
典型的な「風台風」は2018年の21号
たとえば、18年9月4日に京滋に接近した台風21号は、典型的な「風台風」だった。最大瞬間風速は、京都市中京区で観測史上2位の39・4メートル、彦根市で同1位の46・2メートルを記録し、京滋の民家約2400棟が被害を受けた。ただ、総降水量は京都市で84ミリにとどまった。
21号は、神戸市に上陸した後、京滋の西側を通って若狭湾に抜けた。同気象台は「台風は左回りの渦状に風が吹いており、進行方向右側は風速に台風本体のスピードが加わる。21号では、京都や滋賀は進路の右側だったため風が強まった」とする。この時、風向は南風となり、雨雲は紀伊山地にブロックされてあまり流れ込まなかったという。
「雨台風」代表は2013年18号
一方、近年の「雨台風」の代表格は、13年9月15~16日に接近した台風18号だ。京都市の総降水量は250・5ミリ、大津市は328ミリに達した。全国初の「大雨特別警報」が京滋に発表され、由良川や桂川が氾濫した。
18号は、紀伊半島沖を北東に進んで愛知県豊橋市に上陸し、京滋のかなり東側を通った。距離があるにもかかわらず豪雨になったのは、地形と風向の影響だという。台風の進行方向左側だった京滋には、台風の渦に乗って伊勢湾方面から発達した雨雲が流れ込み、鈴鹿山脈や比良山地、丹波高地にぶつかって大雨になったという。
あくまで「傾向」、油断は禁物
ただ、進路によって風雨の状況が異なるのは「あくまで傾向」(気象台)だ。たとえば、秋雨前線が近畿地方に停滞していれば、どこを通っても大雨の恐れがあり、油断は禁物だ。
9月の台風は、幾度も甚大な被害をもたらしてきた。西陣小(上京区)などの校舎が倒壊して多くの命が失われた室戸台風や、戦後最大の台風被害となった伊勢湾台風。第2室戸台風やジェーン台風もあった。過去の災害を胸に刻み、命を守るために備えてほしい。