8月4日、京都市は11年ぶりの赤字決算を発表した。これが、京都市財政破綻か?!と噂されていたことに拍車を掛け、大々的に報道された。
自治体決算に赤字黒字の意味はなし?
11年ぶりの赤字で、驚いておられる方も多いかもしれないが、実は民間企業と違い、自治体の決算の黒字、赤字というのは余り意味がない。そもそも、自治体決算というものは原則的に収支がトントンになるように設計されている。黒字が大きいと「必要以上に税金を集めているのでは?」という咎めを受け、赤字だと「しっかりと経営出来ていない」というこれまた批判を受ける。その為、収支がトントン、または少し黒字に落ち着くように予算が組まれる。さらに、決まった予算を予算の範囲内で執行する為、災害や急激な経済状況の変化など特殊事情を除けば、基本的に大きなブレはでにくい。
したがって、決算の中身をしっかり見ないと実像は見えてこず、ほとんどの市民がその実態を理解するのは困難なのである。
実はずっと赤字だった京都市
京都市も例に漏れず、この11年間ちょい黒字を維持してきたが、実は黒字ではなかった。今回の決算発表で興味深いのは、これまでごまかしてきた実態を潔く公表し、問題を共有したことだ。決算資料の1P目に記載されているのは、赤字は3億円だが、実際は172億円の赤字だという点である。それに加えて、過去の決算にも触れ、これまで実質的には赤字だが、黒字計上をしてきたことを赤裸々に提示している。令和元年決算は4億円の黒字(実態は80億円の赤字)、平成30年は4億円黒字(実態は109億円の赤字)、平成29年4億円黒字(実態は110億円の赤字)という具合だ。そう、この10年ずっと赤字だったのだ。
全国的にも珍しい錬金術を繰り返した京都市
赤字が黒字になるカラクリは特別の財源対策にある。行政は借り入れや基金の取り崩しなど全てを収入に計上できる。その為、以前から問題になっていた借金返済用の積み立て金の取り崩しや追加の借金(行革債など)などを収入に組み込み赤字を回避し続けてきた。これらを組み入れなければずっと赤字になる状況だということだ。しかも、これらの取り組みは全国的に見てもほとんど使われることのない禁断手法で、それだけに自治体関係者の間では驚きの声があがっている。
バスと地下鉄の赤字はコロナ禍による乗客減少が最たる理由だが、京都市決算の赤字についてはコロナ禍というより構造的な赤字だというのが本当の所なのだ。
全てを公表したことは評価に値するが、次年度以降もこの状況は続くと新たな再建計画に謳われており、状況悪化は免れない。今、京都市の実質的な黒字化の為に、より踏み込んだ改革が庁内一丸となってできるかどうか、京都市の真価が問われている。