目指すは「くまモン」 和歌山県海南市が売り出し中の「海ニャン」は小4女子のイラストから誕生 決して「うみにゃん」とは呼ばないでね

山本 智行 山本 智行

 和歌山県海南市の公式PRキャラクター「海ニャン」が”全国区”になることを夢見ている。2020年10月に晴れて公式PRキャラクターに就任したが、コロナ禍でイベントが制限されていることもあり、知名度はもうひとつ。市では今後、デザインのパターンを増やしていく考え。ネコブームにもあやかり、先輩の「くまモン」や「ひこにゃん」のような活躍を目指す。

 海南市の公式PRキャラクターの海ニャンは当然ながら「かいにゃん」と読む。市役所を訪れると「海ニャンコーナー」が設けられ、市がいかに力を入れているかが伝わってくる。

 そんな海ニャンが誕生したのは、2017年4月の「第1回かいなんお菓子まつり」の際に市民団体の『鱧の街・菓子の街「海南」プロジェクト実行委員会(現海南市観光協会お菓子部会)』がお菓子を通じて地域を盛り上げようと、キャラクターを公募したのが始まりだ。

 当時小学4年生の女の子が描いたイラストが採用され、ネコとタチバナをモチーフにしている。募集案内を見て、和歌山県をイメージする「みかん」と愛猫の「きなこちゃん」(スコティッシュフォールドのメス)を連想したそうだ。

 なぜ、ネコとタチバナなのかは後ほど触れることにして、同年8月にはクラウドファンディングを活用して着ぐるみを制作。「平面の世界」から飛び出した海ニャンは、市内の祭りやイベントで活躍してきた。

 2018年にはテレビ和歌山で初めてのテレビ出演。ただし、恥ずかしくて何もしゃべれなかったそうだが、お菓子の街という気運は高まり、なんと同年12月には全国でもユニークで珍しい「海南市お菓子の振興に関する条例」が制定された。

 主に①お菓子発祥の地であることを理解し、関心を深めよう②市と事業者が行うお菓子に関する取り組みに協力しよう③お菓子情報を発信しよう④相手の好みは尊重しましょう、の4点を市民に呼び掛けている。

 2019年から市内の幼稚園や小学校で「お菓子の出前授業」を開始。これら一連の活動や功績が認められ、海ニャンは2020年10月18日に、海南市の神出政巳市長から公式PRキャラクターに任命された。その際にはなんと広報「かいなん」で5ページの特集が組まれた。

 では、なぜ、タチバナかというと、そこには長い歴史というか伝説が横たわっていた。海ニャンによると、その昔、みかんの祖とされる橘(タチバナ)を田道間守(たぢまもり)という人が遠い国から持ち帰って海南市下津町橘本に植えたのだそう。

 海ニャンは「タチバナの実はみかんの元でかつては、お菓子として食べられていたの。だから海南市は、みかんとお菓子両方の始まりの地と言われているんだよ」と教えてくれた。

 また2019年2月には約400年前から脈々と受け継がれてきた「下津蔵出しみかんシステム」が日本農業遺産に認定された。これは石積み技術を使った急な段々畑による独自の農法で「日本のみかん発祥の地」として、またひとつPR材料が増えてもいる。

 ただ、海南市にとっての悩みは海ニャンの知名度不足。コロナ禍によるイベント制限などで活躍の場がないことから仕方ない面もあるが、折からのネコブームも受け、今後はどんどん売り込んでいきたい考えだ。

 まずは今夏には海ニャンと下津蔵出しみかんシステムのロゴマークをデザインした原付きバイク用の「ご当地ナンバープレート」を1000枚制作し、無料交付する。海南市産業振興課の井村実咲さんは「ぬいぐるみを作成し、市内の公共施設などに置いたり、デザインのパターンを増やし、これらを活用しながら海ニャンを市内外に発信していきたい」と意気込んでいた。

 全国区を夢見る海ニャンは女の子で好きなものはお菓子。休日はタチバナの木の下でひなたぼっこを楽しんでいる。特技は肉球パンチと餅投げ。”うみにゃん”と呼ぶとふてくされてしまうそうなので、くれぐれもお間違いのないように。

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