「もふもふ、のっそり」シロクマが超可愛い フランス人のおじいちゃんによる彫刻作品

沢田 眉香子 沢田 眉香子

フランスの動物彫刻家、フランソワ・ポンポンの日本初の展覧会が京都で開催中だ。作品は、その名前の通りの可愛さ。大理石やブロンズを素材にしていながらも、もふもふした毛並みを感じさせるテクスチャー、そして、のっそりした動きをとらえた美しいフォルム。キャラ化された動物でもなく、リアリズムでもない、やさしくなめらかなデフォルメ具合は、「ポンポン様式」と呼ばれた。

なかでも、思わず頬が緩む可愛さなのが、シロクマ。1922年のサロン・ドートンヌに出品したシロクマの作品が高く評価されたことでポンポンの名前は一躍広まり、多くのシロクマ作品を手がけた。ポンポンにとってのラッキーアニマルだ。ちなみに彼は当時、67歳。遅咲きのブレイクだった。

 

ポンポンは、1855年にフランスの旧ブルゴーニュ地方に生まれ、ディジョンの美術学校に通った後、パリに出て約40年間、ロダンなどの彫刻家の下彫り職人をつとめ、その合間に自分の作品制作をおこなった。永らく彫刻家の王道として人物像を手がけていたが、51歳で動物彫刻家の道へ。

ポンポンが初めて展覧会に動物彫刻を出品したのは、つるっとした鳥の作品だった。当時の動物彫刻は、写実的な表現が主流だったため、賛否は分かれたが、ポンポンの作品の、羽毛の表現を省略したシンプルなフォルムと磨き上げたなめらかな仕上げは、当時の最先端のデザイン様式、アール・デコにも通じるモダンさが注目され、室内装飾として人気を得た。

さらに形を研ぎ澄ませてゆき、作品「錦鶏(キンケイ)」では、ブランクーシの抽象彫刻を思わせる芸術的な洗練にたどり着いた。

当時、人物彫刻に比べて地位の低かった動物彫刻というジャンルで独自の作風を極めることで、ポンポンは誰からも愛される彫刻をつくった。小柄な体に彫刻家の愛がみなぎる動物たちは、まさしく生きたアート。見ると幸福になれるポンポンの動物たちに、ぜひ出会ってほしい。

「フランソワ・ポンポン展 〜動物を愛した彫刻家〜」
期間:2021年7月10日(土)〜9月5日(日)
会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊2階(京都市左京区岡崎円勝寺町124)https://pompon.jp

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