なぜ?南京錠が東京・高田馬場に出現 閉鎖された広場のフェンス、鍵には「1917 11/7」と意味深書き込みも

竹内 章 竹内 章

恋人たちが永遠の愛を誓って鍵をかける「愛の南京錠」。そのスポットは国内外にありますが、東京・新宿区の高田馬場駅の駅前広場でもそれが確認されました。新型コロナウイルス感染症対策として、路上飲みを防ぐため、5月18日から広場を閉鎖したフェンスには相当数の南京錠が。誰が、何のために。謎です。 

「高田馬場駅前の広場が野生の飲み会ホットスポットになり、金網フェンスで封鎖され、金網に若いカップルたちの願いの錠前が付けられるようになった。根拠のない、土地に無関係の信仰が発生した瞬間に立ち会えて感動で震えている」。ツイッターユーザーのカノコ(@ka_n_o_ko)さんが投稿した画像が2・5万以上リツイートされ、5万超のいいねがつくなど話題になっています。

カノコさんがこの画像を撮影したのは、6月12日の夕方。信号待ちの際、目に入り、新宿区の名前が入ったポスターと錠前が写るポイントで撮影しました。画像では9個が確認されますが、撮影した金網以外の面にも錠前は付いていたそうです。

定番ともいえる相合傘のマークの下に男女らしき名前が書かれた錠前もあれば、「恋の緊急事態」「LOVE♡」「愛」と書かれ恋愛成就を祈るものも。また意図は読めませんが、「1917 11/7」という日付のような記号が書かれたものもあります。西暦1917年11月7日(旧暦で10月25日)は、ロシアの首都ペトログラードで労働者や兵士らが武装蜂起し、歴史上初めての社会主義政権が成立した日です。コロナ禍の中、政府が東京五輪に向けて突き進む今に、十月革命を重ねているのでしょうか。かなり意味深です。

南京錠を掛けて愛を誓うという行為の起源は定かではありませんが、恋人たちの施錠行為は国内外の観光地などで確認されています。ただ、景観や安全性の問題から撤去を進めるところも少なくないようで、パリでは世界中からやってきた観光客がセーヌ川にかかるポンデザール(芸術橋)などに錠をかけまくったため、2014年に錠の重みで橋の一部が壊れる被害が出ました。

なぜここまで施錠行為が熱くなるのか、これも不明ですが、通信社は「欧州各国の首都をはじめ、遠くはモロッコのマラケシュ、さらには中国でも見られる」と報じています。日本も同様で、神戸の夜景スポットのビーナスブリッジでは、歩道橋の手すりにつけられた南京錠が維持管理の妨げになったため、2004年に取り付け専用のモニュメントが設置されました。

「人通りが多い場所であるにも関わらず、錠前に気に留めるひとが少なかった」と驚くカノコさんに聞きました。

―最初に見つけた時は

「新設されたばかりの場所に信仰の痕跡があるユニークな光景だと思って撮影しました。土着信仰やアニミズムといった面で発生のタイミングにいると考えて貴重な場面に立ち会ったという思いがあります」

―広場の封鎖については異論もありますが

「直接かかわりがないので、賛成でも反対でもありません」

―投稿が注目されました

「想定外に拡散されてしまったので、この行為の成り行きを穏やかに観測するのが難しくなってしまったことが惜しい点です。信仰や儀式のルーツを含め宗教学や民俗学が好きなので、身近で観測できる場所を潰してしまった後悔もあります」

―リプライや引用ツイートについては

「「昭和に流行った」「90年代にやってた」「ドイツのようだ」「江ノ島で見た」というように、各々自分の知る地域、年代をスタンダードとして物事を判断しているのが見受けられたのは面白いです。一方で、ストレス発散のような不快なものもありました。仮面ライダー鎧武/ガイム(のオープニングの一場面)のようだと評している方々には嫉妬しています。見ていたのにその発想に至らなかった自分が悔しいです」

この事態に、駅前広場を管理する新宿区みどり土木部道路課は「広場に設置したフェンスはあくまで仮設であり、想定外のことに驚いています」と戸惑いを隠せない様子。区の設置するフェンスに錠をかけることは、道路上に私物を放置していることとみなされ、法に抵触する恐れもあるといいます。「フェンスにつけられた錠前で通りかかった人がけがをすることも考えられます」として、錠をかけるなどの迷惑行為を行わないよう呼び掛ける対策を講じるそうです。

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