「伏見区出身の人を『京都人』とは言わへんなあ」。え、どういうことですか、デスク? 京都市伏見区は行政区上、どう考えても「京都」ですよ。「いや『京都』ではないなあ」。じゃあ、山科区は? 「それも…、ちゃうんちゃう?」。そうなんですか? 私、滋賀県出身ですし、京都新聞社に入社してまだ日が浅いので分かりません。こうなれば、先輩記者に聞くしかない。京都新聞社のみなさん、「京都」はどこですか?
文化部長に聞いてみた
まずは文化の薫り高い「文化部長」に聞いてみよう。花街や歌舞伎などを取材する部署だし、よく分かるかも。
文化部長(京都市左京区大原出身)「私、中学と高校は京都市中心部に通ってたんです。でも同級生に『大原はチベット』『大原は滋賀』とか言われ、扱いは京都じゃなかったですね」
なんと。外国扱いなんですね。ていうか、滋賀をへき地の代名詞に使わないでください! 琵琶湖の水、止めますよ!
「でも、私も中心部に行くとき『京都に行く』って言ってたから、自分でも『京都』じゃないと思ってたかも」
なるほど、大原は「京都」ではないという意識なんですね。もう少し中心部に近いところの出身の人はいないかな。
山科は京都なんですか?真ん中ほど偉いんですか?
滋賀県警担当記者(京都市山科区出身)「山科区は『京都』だと思いますし、声を大にして『京都市民です』と言います」
「でも『山科区出身です』と言ったときに『山科市な』と冗談めかして言われたこともありますね」
事件担当デスク(京都市上京区出身)「出身は上京区の端っこの方で、御土居の中やけど『洛外』に近い。せやから、上京区の中心部とか中京区の『田の字地区』とかに引け目がある」
御土居が運命の分かれ目?
京都市なのに「京都」ではないという扱いを受け「中心部に引け目がある」という謎。「御土居」が一つのポイントなのかな。でも、御土居って何だろう? 文化財担当の人に教えてもらおう。
文化財担当記者(愛知県出身)「時代によって違うけど、今、よく言われるのは『京都の中心部』イコール『洛中』かな。豊臣秀吉が作った御土居の内側で、大まかに言うと北が鷹峯、南が東寺、東が寺町、西が西大路の範囲」
いやいや、かつての平安京の中ですよ
なるほど、勉強になりました! そうだ、京都検定1級を持つ先輩に聞かないと。
経済担当デスク(新潟県出身)「かつての平安京の範囲内に住んでいる人が『京都人』かな。大極殿があった平安宮の辺りだとなおいいんじゃないでしょうか。長い歴史がある京都は平安京から始まったと言ってもいいので、その範囲は本当の『京都』。でも、鳥羽離宮があった伏見なども平安京ゆかりのいいところですよ」
平安京…!? 歴史上の話を日常に引きついでいるなんて「京都」っていったい何なんだろう。