『麒麟がくる』最終回はファンタジーとは言い切れない!? 明智光秀生存説が囁かれるのは、知れば知るほど「是非もなし」?

鶴野 ひろみ 鶴野 ひろみ

2月7日に最終回を迎えた大河ドラマ『麒麟がくる』。その衝撃のラストにSNS上は騒然となった。予想外の明智光秀生存説を匂わせて物語を閉じたからだ。

「まさかのファンタジーオチ?」。そんな批判も上がったが、明智光秀生存説にはファンタジーだと切り捨てがたい説がいくつかある。そこで、歴史研究家の川口素生先生に、光秀生存説について改めて聞いた。

 自刃したのは影武者!?

「山崎の戦いで敗れ、敗走中に小栗栖(京都市伏見区)で落ち武者狩りに討たれ自刃した」。

これが、通説とされている光秀の最期だ。しかし川口先生によると、そもそも光秀を討ったとされる人物や、切り落とされた首の発見状況にも疑わしい記述が散見するという。

たとえば、首の発見状況。藪や泥の中から発見されたとする書物があるが、自刃の際に介錯をした家臣が、主君の首を最後まで守ろうとしていないことにまず違和感が残る。

また、発見されたとする日付は自刃から数日後。現在の7月中旬にあたる真夏に数日間放置された首が、果たして顔を判別できる状態にあったのかも疑問だ。

そこで浮上してくるのが、「討たれたのは影武者」説だ。当時、力のある武将には複数の影武者がいたという。事実、光秀の影武者が京都で落命したと記す書物や地理書は複数ある。

生き延びたとすれば、光秀はその後どこに向かったのか。日本史ファンならここで「明智光秀=天海」説が浮かぶのではないだろうか。

 「光秀=天海」説はこじつけの域を出ない

生き延びた光秀が、徳川家康の側近の僧・天海になったとする説がある。

『麒麟がくる』でも、戦のない平らかな世を目指していた光秀と家康。もしも2人が手を携え、「大きな国」をもたらしたとすれば、なんともロマンのある話だ。

しかし川口先生は「光秀=天海説は近現代になって主張され始めたもので、こじつけの域を出ないものがほとんど」と話す。

光秀=天海の根拠とされる理由にはいくかあるが、その前提として語られるのが「天海の前半生が判然としない」こと。しかし、そもそもこれが事実ではないらしい。

「天海は陸奥南部(福島県)の戦国大名・蘆名家の一族で、出自も歩みも多くの記録が残されています」。

この時点で、「光秀=天海」にまつわる諸説は、残念ながらこじつけの域を出なくなるのだ。

 大阪に潜み、故郷である美濃に戻った!?

天海でないのなら、光秀はどこへ――?まず大阪南部に、山崎の戦い後の光秀が身を寄せたとする伝承がある。

現存する唯一の光秀肖像画を所蔵する本徳寺(大阪府岸和田市)には、この寺を開基した僧・玄琳(南国梵桂)は光秀の子どもで、山崎の戦いで敗れた光秀が子を頼ってここに身を寄せたという説がある。

また、同高石市の「日向山光秀寺」などは、その名からして光秀と無関係と考えるのが難しい上に、寺紋も光秀の「桔梗紋」。地元役場の調査でも、「光秀が主を殺して逃れて来て、この寺に数年いた」とする資料が見つかっているそうだ。

一方で、岐阜県山県市中洞には、「小栗栖で自刃したのは影武者の荒木山城守で、光秀は自分の身代わりとなった山城守にちなんで荒深又五郎という変名を用いた」とされる伝承が残る。この中洞は、一説では光秀生誕の地とも言われる場所だ。

「江戸時代の随筆にも、光秀が名を改め中洞に隠れていた異説を記すものがあります。この地域には荒深姓の家も多く、中には光秀の子孫と称する方もいらっしゃる。年に2回の供養行事も現在まで続けられています」。

近現代ではなく江戸時代の書物に生存にまつわる記述が残ること、さらに子孫と称する人がその地に存在する点などが評価できると川口先生。

山崎の戦いで逃れた光秀が、まず近場の大阪南部に身を潜め、その後故郷である中洞に戻ったとするなら物語としてつじつまが合う気もする。

 有名人が多い光秀の子孫

数々の資料や伝承からひも解くと、結局、光秀の最期については立証できるものがない。

しかし、良質の系図から確認できるだけでも、光秀の子孫は現代に生きている。

光秀の娘である細川ガラシア(お玉)の子どもの血は、驚くべきことに現在の天皇家に受け継がれているし、岩倉具視とその玄孫(ひ孫の子)である俳優・加山雄三さんも光秀の子孫とされている。光秀のDNAは途絶えずに、麒麟がきた世を生きているのだ。

「『麒麟がくる』の最終回には賛否両論あるかと思いますが、個人的には、生存説という都市伝説を採用したのはおもしろいなと思います。このドラマを見られた方から『こんな伝説もあるよ』という話が出てくるといいですね。眠っていた伝説が、新たな真実を探るカギになるかもしれませんから」(川口先生)。

 

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