奈良と京都の間にある「イオンモール高の原」(京都府木津川市)について「県境をまたぐ店舗の場合、納税や建物規制はどうなっているの?」という取材リクエストが届いた。聞くと全国のイオンモールの中で県境をまたぐのは同店だけ。店内には県境を示すラインが引かれ、税金やゴミも別。店名は最寄り駅(奈良県)にちなむけれど所在地は京都府で、奈良市唯一の映画館も登記上は「京都」…。ああもう、ややこしい!けれど1か所で2府県分の楽しさを味わえるのは日本でここだけ。そんな奥深い県境ショッピングセンター(SC)のあれこれを探りました。
床にも駐車場にも県境ライン
イオンモール高の原は京都と奈良の県境にある平城・相楽ニュータウンに2007年にオープンした。約5万平方メートルの敷地面積のうち正面玄関を含む北側の8割が京都府木津川市に、南側の2割が奈良県奈良市に位置する。同モールによると、事業税は店舗の位置に応じて木津川市と奈良市に納められ、県境をまたいでいる7店舗は敷地面積の広い側の自治体に納められる。民間の電気とガスは共通だが、水道・下水道料金やゴミ集積場も、店舗の位置によって京都と奈良に分かれている。
消防はSC全体が木津川市の相楽中部消防組合の管轄だが、落とし物は拾った場所で京都府警か奈良県警に分かれ、事件や事故の対応も発生場所次第。といっても、今いる場所がどっちかなんて分からんやろ!と思う人も大丈夫。だって店舗の床や駐車場には、県境の位置にラインが引かれていて、駐車場の柱にも「京都府」「奈良県」と表示があるのだ。
ついでに景観条例の適用も、実際の場所がどちらかによる。このため、古都・奈良市側のユニクロの看板は茶色っぽくしてあった。
場所的には「奈良市唯一」なのに…
県庁所在地にもかかわらず映画館のない奈良市。だが、実はモール内にあるイオンシネマ高の原は、最寄り駅の近鉄高の原駅(奈良市)に最も近く、厳密には奈良市にある。ただ、店舗の所在地はSCに合わせるため「京都府木津川市」とされており、情報サイトなどでも「京都の映画館」という位置づけだという。