こんなに怖くて大丈夫?? 脳に焼き付くレベルの「特殊詐欺防止ポスター」千葉県警が“攻めた”理由

広畑 千春 広畑 千春

 277億8千万円ー。昨年1年間に振り込め詐欺などの特殊詐欺で騙し取られたお金の総計です。被害件数自体は減少傾向にあるものの、昨年には新たにコロナ禍に便乗した犯行も。さらにはバイト先の休業などで経済的に困窮した若者を狙いSNSなどで「受け子」の闇バイト募集が横行しているとの指摘も。そうした中、千葉県警がこのほど新たに採用した啓発ポスターが、異彩を放っています。

 そのポスターは、日本を代表する怪奇漫画家、日野日出志さんのプロダクションが制作。もう、一度見たらごめんなさいというか、子どもが見たら泣き出してしまいそうな、いや、酔っ払いも目が覚めるのでは…というおどろおどろしい妖怪がこちらを向いてニヤリと笑い、手を伸ばしています…。

 依頼したのは千葉県警生活安全総務課の犯罪抑止推進室。プロダクション代表の寺井広樹さんによると、昨年日野さんが制作した薬物乱用撲滅ポスターの採用を同県警や行政に打診したそうですが、その際はあまりの恐ろしさなどにNGが。ですが後日、同推進室から特殊詐欺向けのポスター依頼が届き、日野さんの1970年代のエッセンスを盛り込んだ図柄で作り上げたといいます。

 県警によると、昨年1年間に千葉県内で発生した特殊詐欺(千葉県警では「電話de詐欺」と名付けています)の件数は1217件。全体としては前年より減少したものの、還付金詐欺などは増加しています。また、今年も2月12日までに13件の被害が確認され、被害額は2700万円を超えています。

 にしても、よくぞGoサインが出たというか、攻めたという印象ですが…「私も最初見た時には、その怖さに驚きました。でも、その分、一度目にしたら忘れられないほど強烈なインパクトがありますし、電話de詐欺の怖さが文字通り『脳に焼き付く』と思いました」と忍浩寿室長。「詐欺の犯人は電話口などでは紳士的に振る舞っていたり、困り果てた物言いだったりしたとしても、その裏では人の心の隙を虎視眈々と狙い、入り込んでくる。人間のような姿をしていても、日野先生の描く妖怪と同じように怖いものだということを伝えたかった」と話します。

 一方、日野さん自身も、これまでに何度か特殊詐欺とみられる電話を受けたことがあるといい、つい10日ほど前にも電話が。そのときは撃退したそうですが、「高齢者が、これまでの人生で一生懸命働いて、家族や老後のために貯めてきたお金を、優しさにつけ込んでだまし取っていく。実に卑劣で、許せない」と憤りをあらわに。「正直、まさかこの図柄で通らないでしょう?とは思ってましたが、なぜかOKを頂きまして(笑)。一人でも被害者が減ってくれれば嬉しいです」と話します。

 ポスターは今後、警察施設のほか、理解を得られた大学構内などにも張り出す予定といい、忍室長は「若者が軽い気持ちで手を染めることのないよう、警告していきたい」としています。

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