「今回はヤバイ」と評判の若手映画作家育成プロジェクト 今後が楽しみな監督3人はどんな人?

黒川 裕生 黒川 裕生

将来を嘱望される若手映画監督3人による短編3作品(各30分)が、2月26日の東京を皮切りに、名古屋、大阪の映画館で順次上映される。日本映画振興事業の一環として文化庁の委託を受けた特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)が2006年度から取り組む「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。これまで中野量太監督(「浅田家!」「湯を沸かすほどの熱い愛」)や岨手由貴子監督(「あのこは貴族」)、佐藤怪磨監督(「泣く子はいねぇが」)、ふくだももこ監督(「おいしい家族」)といった才能を輩出してきたプロジェクトで、かつ「今回(2020年度)はいつにも増して粒揃い」と関係者の評判も高いとあって、各方面の注目を集めている。

オリジナル脚本、35mmフィルム撮影で短編映画を制作。2020年度は植木咲楽監督、木村緩菜監督、志萱大輔監督の3人が選ばれ、プロのスタッフ、キャストの協力を得て作品を完成させた。3人とも20代で、普段は助監督や映像ディレクターとして活動。3都市の劇場での上映を控え、「どんな風に見てもらえるのか今から楽しみ」と口を揃える。

植木咲楽監督「毎日爆裂クッキング」

植木監督の作品は、食べ物をモチーフにしながら、世の中の抑圧的な空気を吹き飛ばすような快作「毎日爆裂クッキング」。自身の監督作で35mmフィルムを使うのは初めてで、「情報量が多い4Kや8Kの鮮やかな映像と違い、『自分の見たいものにフォーカスしてくれる』ように感じられるのがいい。自分の目線に寄り添ってくれるというか、見たいものを美しくしてくれるんです」と話す。

幼い頃から父の影響でバスター・キートン、ハロルド・ロイド、チャールズ・チャップリンという“世界の三大喜劇王”に親しんできたという植木監督。「コロナ禍で映画業界も制約が多く大変な状況ですが、そんな空気をねじ伏せられるような作品を撮りたいです」と頼もしい。

木村緩菜監督「醒めてまぼろし」

常に睡眠不足の少女を巡る少し不思議な物語「醒めてまぼろし」を撮ったのは、木村監督。「自分には帰る場所がない」という思いに囚われていた時期があったといい、その感覚を基に脚本を書き上げた。

「友人や家族ともうまくいかず、“帰る場所のない女”はどうやって生きていけばいいんだろうと考えていました。主人公は映画の中で“拠り所”となる人と出会います。でも現実にそういう人と出会えなくても、心の中に“拠り所”をつくることができれば、良いこともつらいことも抱えて生きていけるんじゃないか。そんな思いを込めました」

今は助監督として働きながら、自分の映画を作る道を模索する日々。「大学時代に書いた脚本もいつか映画にしたいと思って直している最中です。暴力的で、いろんな人が死ぬ映画なんですけど…」

志萱大輔監督「窓たち」

「窓たち」の志萱監督は、「実体験を織り交ぜつつ、夫婦でもなく恋人同士の最初の楽しい感じでもない、“狭間”に落ちた関係の2人を描いてみたかった」と語る。

映画監督を志すようになったのは、高校2年の頃から。「当時は脚本のことなんて考えたこともなくて、とにかく『よくわかんないけど撮りたい!』という思いに突き動かされて友達をいっぱい撮っていました。今もあの楽しかった感覚を追い求めて仕事をしている部分は少しあるかもしれません」

35mmフィルムの威力には、志萱監督も驚いたという。「映っているものの密度というか濃度が圧倒的。奥行きもすごく感じられて、カメラマンが『16mmとは違うよ』と言っていたのがよくわかりましたね」。今は、東京以外の場所で映画を撮ることに興味があるそうだ。

上映は2月26日〜3月4日に東京の角川シネマ有楽町、3月12日〜18日に名古屋のミッドランドスクエア・シネマ、3月19日〜25日に大阪のシネ・リーブル梅田。チケットは(3作品まとめて)一般1300円、学生・シニア1100円など。各劇場では、監督らによる舞台挨拶も予定している。

◇ndjc公式サイト http://www.vipo-ndjc.jp/

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