「コロナ禍でなければ助かった命も」孤独死の相談5倍に、作業は防護服で…一変した「特殊清掃」の現場

八木 純子 八木 純子

 A-LIFE株式会社(大阪市)が運営する「関西クリーンサービス」(https://www.k-clean.jp/)は長年にわたり、孤独死や自殺・火災・事故現場などの特殊清掃や遺品整理、消毒などを請け負ってきましたが、コロナ禍になり、現場の様相が一変したといいます。孤独死の相談件数は5倍になり、発見の遅れも目立ち、作業着は防護服に。同社代表取締役の亀澤範行さんに現場のいまを聞きました。

独居の高齢者の孤独死も「間接的なコロナ死」?

 コロナ時代になり、これまで以上に独居高齢者の孤独死が目立っています。「緊急事態宣言などで地域や仲間と疎遠になり、誰にも見守られずに人生を終えているのが現状です。弊社では孤独死は新型コロナ感染症による間接的な死だと考えています」と亀澤代表は話します。

 コロナ禍で発見も遅れ「腐敗してしまった現場が大半」といい、中にはコロナ禍でなければ「助かった命もあると思います」と、残念そうに語る亀澤代表。その一例を紹介していただきました。

 2020年秋にあった依頼もその一つ。大阪府の住宅街に佇む一軒家での高齢者の孤独死による特殊清掃と遺品整理で、ご遺体の第1発見者はご家族でした。死後10日経っていました。外出自粛がなければ、通常なら家に閉じこもることはない活発なタイプだったとか。部屋は整理整頓され、掃除も行き届いていて、亡くなる直前の自炊した後や配達不在票が何通も残されていたそうです。

 「普段ならもっと早くに発見されていたに違いありません。コロナ禍でなければ、もしかして助かったかもと考えると、コロナが憎いですね」

コロナ禍で作業は防護服で。消毒依頼も急増!

 これまでとの大きな違いは作業服にも表れています。コロナ時代になり、特殊清掃や遺品整理、消毒などの現場では防護服着用で作業することが多くなったといいます。冬場はまだしも、夏場の作業は暑くて過酷でしょう。

 消毒関連の仕事も急増しました。同社では特殊清掃で培ったノウハウを活かしたウイルス・細菌の除染や消毒作業を専門に行う「プロエンドクリーン」(https://proendclean.jp/)も運営していますが、ここに来てコロナウイルスの陽性者が出たところだけでなく、感染予防を目的とする企業や施設、オフィス、店舗、一般家庭などからの依頼が多くなっているのです。

 「プロエンドクリーンでは特殊清掃では6700件以上の実績があり、3000件以上の除菌脱臭作業をしてきました。そのノウハウを活かし、有効な薬剤や道具を用いて、安全に配慮しながらウイルス・細菌の除染・消毒作業を行なってきましたが、やはり、コロナ禍では勝手が違います」

 2020年、日本でもコロナの患者が出はじめた当初は作業員自体がコロナの除染作業を怖がっていたといいます。「何しろ未知のことで、強制はせず、作業してくれる人たちだけで対応していました。そのうちに依頼も増え、人手が足りず、見るに見かねたのか、作業を希望する人が増えました。『僕たちがしないで誰がやるんだ』みたいな正義感も出たのでしょうね、きっと」

 コロナ禍で感染者が出たところなどの除染・消毒などは急を要します。

 「陽性者が出ればクラスターの心配もあり、会社や施設、お店やご家庭などからウイルス除染や消毒の依頼が入ってきます。『正直言って素人なので、どうしたらいいのかよくわからない』というのが本音みたいですね」

 「また、お店などは『お客様に従業員が陽性になったと知られたくないので、目立たないようにやってほしい』とお願いされることもあります」

 確かに、防護服で作業していたら目立ちます。早朝や夜間作業、即日作業などにも応え、人目につかない時間帯に作業することもしばしば。それも、従業員の安全性を確保しながらの作業です。「現場では作業する者が感染する危険性があり、作業が終了するまで誰一人として気は抜けません」。そして、作業完了時には「除染・消毒済証」などを発行しています。

 コロナ禍で依頼は増えたそうですが、手放しでは喜べません。「コロナがない時代がいいですね。コロナ関連の依頼が来る度に、早く収束してほしいというのが本音です」と亀澤代表。緊急事態宣言が続く中、特殊清掃や除染・消毒の仕事に就いている人たちもまた、昼夜問わずコロナと闘ってくれています。頭が下がる思いです。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース